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最後の方は絶叫に近かった。
同時、霊体中の蛇達の眼が光る。
長は一呼吸置いた後、
『ゆえに礼を言う。お前達の悪行が餌となり、彰司と岡村を引き寄せたのだ』
最悪だ……自分勝手極まりないよ。
長の為に来たんじゃない、少なくとも僕は、修行の為に山に来たんだ。
事情を知って修行どころじゃなくなったけど、滅する気持ちは変わらない。
それに……よく言う、”瀬山の長”に返り咲く為だって?
そんなちゃちな願いの為に、どれほどの人が人生を壊されたか。
『餌としては優秀だった、が、お前達に失望したのも本心だ。本来なら命通り、彰司を抑え、岡村を拘束し、私に差し出すべきなのだ。それを……身の程知らずの愚か者は謀反を起こした、わかっているのか? 罪は、重いぞ』
ザラつく声が一段と低くなり、蛇の顔が黙るみんなを凝視した。
そして……なんだ……?
長は何をしているんだ……?
腕が……上がった。
数多の蛇で編み込んだ、腕らしきを胸の前に持ってくる。
左右のそれを向かいに合わせ、腕の先端、手のひららしきの更に先には長短混ざった細い小蛇が蠢いていた。
左に5匹……右にも5匹……計10匹の小蛇らは、人の指によく似てる。
それらを重ね、複雑に絡めだし……ああ……あの動き……あれは……あれは……印だっ!!
「みんな!! 逃げて!!」
僕は喉がひりつくくらい、腹の底から声を上げた。
長は印を結んでるんだ!
蛇の霊体じゃ結べないと思ってた、手指がないから、印は無理だと思い込んでた!
クソッ! 先入観は良くないと、さっき思ったばかりなのに!
『遅い、』
淡々とした長の一言。
その直後、一千はあるだろう太い長針が、蛇の霊体を中心に360度の全方向に飛ばされた。
みんなは上に、横に、咄嗟に避けるも、全てを避ける事は出来なくて、足や腹に無数の穴を開けていた。
それを視て……僕は言葉が出なかった。
そう、刺さるどころじゃない、長針はみんなの霊体を貫通したんだ。
すぐに動いたのは大橋さんと近藤さんだった。
眩く両手を光らせて、みんなの治療にあたってる。
自分達の傷は後に回して、必死になって霊力を使う……が、それに対して中村さんが声を上げた。
『大橋! 近藤! ありがたいが2人して治療にあたるな! どちらか1人は先に自分を治療しろ! 救助班が全滅しては班全体が危機となる! 私の治療はしなくていいから、早く!』
頷いた救助隊は命令に従った。
大橋さんは一歩下がって自己治療、近藤さんはみんなの治療を継続だ。
長はつまらなそうな空気を出して、またも印を結びだす。
『治療など無駄な事を。希少の子らは此処にいる、お前達は用無しだ。喰ろうて霊力にしてもいいが岡村が邪魔をする。ゆえに利用価値は無くなった、』
絡む小蛇がピタリと止まり、それは印を結び終えた事を意味していた。
長が両手を空に向けると、途端、暗雲が立ち込めた。
だがよく視れば雲じゃない、たくさんの黒い塊が頭上を浮遊してるのだ。
あの塊……視れば梵字によく似てて……
『消えるがいい、』
言った長が両手を下げた。
その動きに連動し、梵字は浮力を失った。
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