第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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(おさ)の話に愕然とした。 鎖ならみんなを助ける事が出来ると思ったのに。 鎖ならって……ああ、違う。 鎖しか手は無かったんだ。 なのにそれを封じられ、僕は再び途方に暮れた。 だが諦めない、助け出す手をフル回転で考えた。 それゆえ僕は黙り込む。 (おさ)はそれを絶望と捉えたようで、嬉々として饒舌になった。 『岡村、辛いか? 悔しいか? 自分を恨むのだな。霊力(ちから)はあっても技術がない、希少の子が聞いて呆れる。奴等を滅したのは私ではない、お前の未熟さだ。そしてその未熟さが身を亡ぼす。岡村はこれから私に魂を喰われ、生者の身体を奪われるのだ。抵抗したとて私には勝てぬ。覚悟を決めるがいい』 ゾクリと背中が冷えてくる。 僕を喰う気だ。 みんなはいない、先代も、瀬山さんも。 (おさ)にしてみりゃ、またとないチャンスだろうけど冗談じゃない。 一旦退こう、大福に目配せして、全力で走るんだ。 鎖以外に何か手立てを考えて、すぐに戻る、必ずみんなを助ける。 僕の隣で唸りを上げる猫又に、目線を送って意思を伝える。 イチニのサンで走るんだ、いいね。 (おさ)が何か喋ってる。 状況が有利になって、舌がよく回り出す。 僕こそチャンスだ、逃げてみせる。 『____悔しいかな、彰司が相手では、私一人では手に負えん。だが小蛇を使えば簡単だ。岡村なら、小蛇を使うまでもない。魂を喰らい、身体を乗っ取り、お前の姿で彰司を待つのだ。さすれば油断する、奴を喰らうのも難儀はない』 勝手な事を……! だけどいいや、喋ってろ。 その間に僕達は退かせてもらう。 大福、行くよ、イチ、ニの____ カウント1つを残したところで、(おさ)が地面をタンと踏む。 すると激しい火柱が、高く上って2人と1匹を囲んでしまった。 『逃がさんよ、』 (おさ)は嬉々として、弾む声でそう言った。
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