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「はぁ……はぁ……」
息が切れる。
狭い範囲で短時間ではあるものの、走りっぱなしは身体に堪えるよ。
だけど____
長の動きが止まった。
質より量のザンネン霊媒師は、狂ったように霊矢を撃った。
グルグルと走り回って、前から横から後ろから。
僕の身体を傷付けたくない長に付け込み、これでもかと放ったのだ。
今の長は串刺しどころの騒ぎじゃない。
針多めのサボテンのごとく、真っ赤な霊矢が隙間なく刺さり込み、元の霊体が視えてこない。
刺さりすぎてて霊体の可動がままならず、尚且つ、蛇をほどいて編み直そうにも、霊矢に邪魔されそれさえも出来ずにいた。
それでも、まだ息はあるようだ。
立ったまま固まる長は、さっきのように饒舌ではないものの、シャーシャーと音を漏らし、時折霊体をビクつかせていた。
動かない今のうちに一旦退くか、それともトドメを刺すべきか……迷うところではあるけれど、たっぷり1分思案した結果、僕は退く事を選択した。
「大福、今のうちに此処から脱出しよう。みんなの所に行かないと。諦めない、絶対に助ける」
霊矢を撃ってる間も、大福はずっと僕をフォローしてくれた。
ありがとうね、これがぜんぶ終わったらアパートでゆっくりしよう。
ちゅるーをあげる、ささ身も茹でてあげる、なんでも好きなもの食べさせてあげるからね。
さて……此処からどうやって出よう。
まわりを視れは火の壁が、視上げた先には曇天が、出口は遠く、炎を足場にするのは不可能だ。
僕が霊だったらなぁ、高く飛ぶ事が出来るのに。
中村さんも杉野さんも翔君も、引く程高く飛んでたっけ。
思い出し、ダメ元でジャンプする……が、やっぱりね。
生者はせいぜい数十センチが限界だ。
……フゴ……フゴフゴ……フゴフゴフゴフゴ……
ん……?
首の後ろがくすぐったいな……って、振り向かなくてもわかる、大福でしょ。
大福は僕の匂いを嗅ぐのが好きだ。
ふとした時とか寝る前とか、隙あらばフゴフゴするのよね。
それされるの大好き、めちゃくちゃ幸せな気持ちになるもん。
でもさ、なんで今?
「大福ー、フゴフゴはまた後で。早くココから脱出しなくちゃいけないし、それにさ、長がいつまた動き出すかわからないでしょ?」
振り向いて、顎の下をコチョコチョしながら言い聞かせた。
だがしかし、姫は不満なお顔になって、
『うなっ! うっなー!』
ちがうー!とプリプリだった。
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