第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

180/267
前へ
/2550ページ
次へ
「あぁぁぁっ!!」 叫ばずにはいられなかった。 だって首がもげたんだ。 視たくないと思うのに、目は転がる頭に向いてしまう。 顔面にびっしり生えてた細い小蛇は、今ではグッタリとして動かない。 が、首無しの霊体(からだ)の方は動いてる、気持ち悪い、最高に気持ち悪い! 『これでまた動ける、』 ふぅ、とは言ってないけど、確かに動きが良くなった。 ズズズと引きずる事もなく、ゆっくりだが確実な足取りで僕の前までやってきた。 「……首、なくても大丈夫なの?」 聞いてみる、答えるかはわからないけど気になるよ。 『この霊体(からだ)は仮のもの、首でも腕でも無くなったとて問題ない。誰かのおかげで(・・・・・・・)頭部の蛇は死に絶えた。あんな物を乗せていても役には立たん、邪魔になるだけだ。故に切り離したまで、』 答えた(おさ)は少し背を曲げ、首の断面を僕に視せる。 傷を修復しようとしてるのか、黒い液がグジュグジュと染み出していた。 「うっ……酷いな、……それって……その……痛くないの?」 『痛みはある。そんなもの無くてもいいのだが、痛覚だけは死して尚、感じるものなのだ。だがこれしきは耐えられる。岡村よ……私が手を出せないのを良い事に、さっきは随分と撃ち込んでくれたな。……だがいい。未熟にして無限に霊矢が撃てるとは……その霊力(ちから)、ますます手に入れるのが楽しみだ』 首もなく、霊体(からだ)の蛇の半分以上が壊死してる。 なのに声は弾んでるんだ、さっきみたいにフラついてもいない。 いらない(モノ)を切り離し、霊力(ちから)の分配を調整したのだろうな……まったくもって厄介だ。 「魂も身体も渡さないよ。それより言ったでしょ、僕は忙しいんだ。今はアナタの相手をしてられないの。だから邪魔しないでっ!」 言い叫んで両手を前に霊矢を放つ。 もう一度大人しくしててくれ! 
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加