第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『岡村と分かり合おうという気はない。そもそも、分かり合う必要もないのだから問題は無い。私はお前を喰らい、希少の霊力(ちから)と生者の身体を手に入れる。それだけだ。少々無駄話が過ぎたな……ではそろそろ、』 言いたい事を言うだけ言って、(おさ)は一層力を込めた。 両手はギリギリと締め上げられて骨が軋む。 「やめろ……離せ……!」 『離す訳がないだろう。機は熟した、邪魔する者はいない。心置きなく喰らうとしよう』 掴まれて動けない。 半分は壊死してる、(おさ)霊体(からだ)は目の前にある。 『岡村、そういえば言っていたな。「首がなくなても平気なのか」と。問題ないと答えたが、理由までは話さなかった。お前という生者も今日で終わりだ、最後に良いものを視せてやろう、』 「……良いもの? それ絶対良いものじゃないんだろうな。……視たくないけど、嫌だと言っても視せるんだろう? それって一体なに、……え、」 言葉が止まる、目を疑った、さっきからこんなのばっかりだ。 普通の霊体(からだ)じゃないと言えばそれまでだ、でも、でもさ……! ブチブチと音を立て、(おさ)の胸が裂けていく。 縦に開いた霊体(からだ)の奥に何かが視えた。 黒っぽく楕円に近い形のそれは小刻みに揺れている。 人の顔くらいの大きさで、だけど瘤に覆われて、これは……これは……蛇の頭だっ! 「うわぁぁぁっ!!」 蛇で編まれた霊体(からだ)の中に蛇の頭が潜んでたんだ! 赤黒い眼がこちらを視てる、 横一文字の大きな口がパックリ開いて、 その中から更に別の顔が視えてきて、 ああ……! ああ……! ああぁぁぁぁ! これは、これはさ、 (ここ)に来て最初に視た、 深い皺が刻まれて、 眼はギラギラと光ってる、 年老いた、 邪悪な、 ”人”の……(おさ)だ……! 目が合って胃液が上がる、 負のマトリョーシカは、 頬も額も顎も髪も粘液にまみれている、 その最奥が、蛇の口から生まれるように、外にズルンと飛び出してきて、 『霊矢も猫の爪もご苦労だった。入れ物(・・・)をどんなに傷付けても致命傷にはならぬ。本体は、此処(・・)なのだから』 そう言ってニィィと笑い、僕の鼻先まで近づいて、そして、 『魂から頂こうか、』 (おさ)は口を大きく開けた、 その時、ほんの僅かだけど、 僕を掴む手が緩んだ、 今がチャンスだ、逃げるんだ、 そう思うのに、恐怖で身体が震えてしまって、 動きたいのに動けなくって、 気持ちは焦って、 頭の中は真っ白で____ ____きっともう駄目だ、
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