第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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だけど、だけどさ……そうは言ってもありがたいよ。 大福が来てくれなければ、今頃僕は喰われてたもの。 魂は消え、生身の身体は(おさ)が手に入れ、悪事を重ねるのだろう。 本当は……僕だけでなんとか出来れば良かったんだ。 だけど1人じゃ無理だった。 気持ちが恐怖に負けてしまって、”みんなを助けるんだ”なんて意気込んでたのに、それさえもダメにしそうになっていた。 この仔が助けてくれたから、今こうして生きているんだ。 負けた気持ちが徐々に元気になっていく。 大福、ありがとね。 心から感謝してる、大好きがまた増えた。 こういうの、ちゃんと言葉で伝えたいなぁと、しがみついた背中から声をかけようとしたんだ。 だけどその時、猫の首とか頭とか霊体(からだ)とか、至る所に目が釘付けになった。 「これって……」 フワフワでツヤツヤで良い匂いがいつもする。 大福の、ついでに僕も自慢に思う真白な毛皮が、何か所も焦げていた。 茶に色が変わってて、チリチリと毛が縮み、焼けて透ける地肌は赤く斑になっている。 これ……ヤケドだ。 火の筒から飛び込んできた時、それから僕を咥えて飛んだ時、いずれも火を避ける余裕がなかったんだろう。 それでアチコチ焼けてしまったんだ。 「大福…………」 名前を呼んで、恐る恐る焼けたところを撫ぜてみた。 猫又は前を視たまま『うなぁ?』と答える。 「…………あのね、ごめんね。助けてくれてありがとね」 ヤケド、痛そうだ。 こんなになってまで、助けに来てくれたんだ。 僕は猫の首に顔を押し付けギュゥと抱きしめた。 少しの間そうして、その後は涙を拭いて顔を上げた。 そして、大福の傷を治すべく、癒しの印を結び始めたのだ。
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