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だけど、だけどさ……そうは言ってもありがたいよ。
大福が来てくれなければ、今頃僕は喰われてたもの。
魂は消え、生身の身体は長が手に入れ、悪事を重ねるのだろう。
本当は……僕だけでなんとか出来れば良かったんだ。
だけど1人じゃ無理だった。
気持ちが恐怖に負けてしまって、”みんなを助けるんだ”なんて意気込んでたのに、それさえもダメにしそうになっていた。
この仔が助けてくれたから、今こうして生きているんだ。
負けた気持ちが徐々に元気になっていく。
大福、ありがとね。
心から感謝してる、大好きがまた増えた。
こういうの、ちゃんと言葉で伝えたいなぁと、しがみついた背中から声をかけようとしたんだ。
だけどその時、猫の首とか頭とか霊体とか、至る所に目が釘付けになった。
「これって……」
フワフワでツヤツヤで良い匂いがいつもする。
大福の、ついでに僕も自慢に思う真白な毛皮が、何か所も焦げていた。
茶に色が変わってて、チリチリと毛が縮み、焼けて透ける地肌は赤く斑になっている。
これ……ヤケドだ。
火の筒から飛び込んできた時、それから僕を咥えて飛んだ時、いずれも火を避ける余裕がなかったんだろう。
それでアチコチ焼けてしまったんだ。
「大福…………」
名前を呼んで、恐る恐る焼けたところを撫ぜてみた。
猫又は前を視たまま『うなぁ?』と答える。
「…………あのね、ごめんね。助けてくれてありがとね」
ヤケド、痛そうだ。
こんなになってまで、助けに来てくれたんだ。
僕は猫の首に顔を押し付けギュゥと抱きしめた。
少しの間そうして、その後は涙を拭いて顔を上げた。
そして、大福の傷を治すべく、癒しの印を結び始めたのだ。
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