第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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大福のヤケドを完治させ、どこもかしこもフワフワモコモコ。 そのフワモコをナデナデナデナデ、これで僕のメンタルも大復活だ。 次は____ 滞空する猫又の背に乗って、僕は地上を視下ろしていた。 炎の筒は燃えている。 (おさ)はまだ出てきてないけど、それは時間の問題だろう。 1時間後に出て来るか、それとも1分後かはわからない。 だからこそ急がなくっちゃ。 僕は目線を横にずらし、いまだ燃え続ける火の山を視た。 あの中にみんなが閉じ込められて、どのくらいの時間が経っただろう。 どうか無事でいて、どうか持ち堪えて、アナタ達はまだやる事があるんだもの。 全員で(おさ)を滅し、悪霊じゃなく英雄として最期を迎えるんだ。 (おさ)なんかに消されないで、僕が絶対助けるからね。 「とは言え……どうしたら良いのかな。霊鎖はダメだ、炎が溶かしてしまう」 ビュービューと風を受け、フル回転で考える。 僕が出来る事は少なくて、手立ては本当に限られる。 それでも絶対諦めない。 な、なんてね、さっきの僕は(おさ)が怖くて心が負けて、”きっともうダメ”だと思ったクセに。 だけどね、もう負けないよ。 僕には大福がいる、先代も瀬山さんも、”おくりび”のみんなもいる。 そして”日本で一番の霊能軍団、瀬山の霊媒師達”もいるんだ。 あはは、なんだか不思議だな。 みんなを想うだけで心強いよ。 それから1分考えて、それで、僕は一つ思いついたんだ。 「…………駄目で元々。やってみるか」 みんなが梵字に潰される前。 どんなに攻撃してみても、受けた(おさ)は、蛇の霊体(からだ)を解いて編んでの繰り返しで無効化したんだ。 その時、僕は試そうとした事がある。 スキル的に自信がなくて結局はしないまま、グズグズしてたらみんなは危機に陥って、今思えば失敗してもやっておけば良かったと思う。 こういう後悔は嫌だな、もうしたくない。 だから今こそやってみようと思うんだ。 「最初の案とは少し違うけど、やる事は大体同じだ」 大福の背中に跨って、まず最初に山に向かって霊矢を撃った。 両手両五指、1回10発。 3セットも撃てば検証出来るだろう。 速度を持って斜め下。 霊矢は燃え盛る山肌に突き刺さる。 暫く視てたが霊矢が溶ける気配はない。 やっぱりそうか。 あの炎が溶かすのは、”瀬山さんと大福と僕の霊力(ちから)”が混ざったもので、”僕だけの霊力(ちから)”は溶かさないというコトだ。 (おさ)は”みんなの中にある霊力(ちから)”を弾くと言ってたもんな。 検証クリア、これなら試せる。
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