第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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急ぎ地上に降りた。 羽の文字は降り続け、辺りは幻想的な雰囲気だ。 そんな中、厳つい男達が背中をさすり、腰をさすり、『霊体(からだ)イテー』とか『こ、腰が……』とか渋い声を漏らしてる。 今すぐ消えそうとまではいかないけれど、さっきまで山に潰され燃やされてたんだ。 無理もない、きっと霊体(からだ)が辛いのだろう。 この後、大丈夫かな? (おさ)と戦えるかな? 先に癒しの言霊を使った方が良いかな? なんて考えていると、僕に気が付いた男達が一斉に喋り出した。 『岡村ぁぁぁ! 助けてくれてありがとなぁぁぁ!』 『えぇっとー! 感謝しますぅぅ! 中でぜんぶ霊視(みて)ましたぁぁ、はいぃ!』 『(おさ)のヤロー、本体は蛇の腹だったのかーっ!』 『猫も大活躍じゃないかー!』 『ありがとう! ありがとう!』 と、このくらいは聞き取れたけど、あとはもう何が何だかだ。 大声で大騒ぎの大興奮。 女性が3人集まれば賑やかになる、とはよく聞くが、なかなかどうして、男だって負けてない。 てか良かった……これだけ元気なら心配しなくてすみそうだ。 いつぞやのオタク軍団か? ってくらい騒がしい中、僕らのポニテにいぶし銀、中村さんがやってきて、 『岡村、改めて礼を言う。我々を助けてくれてありがとう』 そう言ってくれたんだ。 「みんなが無事で本当に良かったです。(おさ)に消されちゃうなんて絶対イヤだもの。それより霊体(からだ)は大丈夫ですか? みんな元気そうに視えるけど……実は無理してるとかじゃない? もしそうなら、(おさ)が来ないうちにみんなを回復させたいなって、」 『ありがとう、だが大丈夫だ。霊体(からだ)はなんともない。彰司さんと岡村と猫の霊力(ちから)が守ってくれたんだ。塊に押し潰されて、火までつけられ、此処までかと無念に泣いた……が、いつまでたっても消滅しないし、苦しさも感じない。大橋と近藤に聞いても何もしていないと言う。それで気付いたんだ。強い霊力(ちから)が我々を救ってる、傷の霊体(からだ)を修復し続けているのだとな』 そうだったのか……混ざり合ったマーブル模様、瀬山さんと大福と僕の霊力(ちから)がみんなを守ったのか。 だから無事でいてくれて、だからあんなに元気なんだ。 えへへ、なんだかすっごく嬉しいや。 でもってあの欠片、みんなに飲んでもらっておいて、本っ当に良かったよ。 あの時はただ単に、絶対失くさないようにするには飲んじゃえば良いんじゃない? くらいのノリだった。 ぶっちゃけ深く考えた訳じゃない。 修復機能が発動するのは、(おさ)に喰われた時だけだと思ってた。 まさかそれ以外でも発動するとは考えてもなかったんだ。 これってさ、結果オーライ、超オーライだ。 中村さんは『リスクを仮定し、回避の為に欠片を飲ませたのだろう?』なんて感心してて、それはチガウと言ってみたけど『謙遜するな』と譲らない。 何度言っても信じてもらえず……もういっか。 誤解だけども、ココはひとつ褒められとこう。
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