第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『ひゃなせ!(はなせ) おきゃむら……!(おかむら) フガフガフガ……ぶはっ! なんだよ、いきなり口塞ぐなって! ははーん、さては岡村、【弥生さん】って人が好きなんだな? 彼女か? それとも奥さんか?』 (かける)君はからかうように僕を視る。 ちょ、そういう事言わないで! 「ち、ちがうし、彼女じゃないし、奥さんでもないし、てか人妻だし、ちがうから、そ、そういうんじゃないから、」 動揺が、漏れ漏れだったんだと思う。 『違うならなんなんだ?』と食い下がる(かける)君を、他の大人達が止めた。 『(かける)、そのなんだ。空気読め。おそらく岡村の片想いだ。それも報われないパターンのヤツ』 筋肉質の男前、長澤さんが憐れむ顔でそう言った。 か、片想いってなんでバレた?  いやわかるか。 わかるならもうヤメテ、そんな目で僕を視ないで。 僕の願いも空しく、(かける)君がトドメを刺しにきた。 『えぇ! 片想いなのか!? 希少の子なのに片想い?』 き、希少の子関係ないし、なんでもかんでもそこに結びつけないでー!  と言い返したいのに、テンパりすぎて言葉が出ない。 僕はこの中でも、大人中の大人、いぶし銀に助けを求めガン視した……が。 『ほほう、確かに【弥生さん】ばっかりだ』 めっちゃ楽しそうじゃないかー! 中村さんは僕に優しく(本当に優しい顔だった)微笑みかけると、目線を文字に、熱心に追いはじめた。 ヤ、ヤメテ……武士の情け……せめて声には出さないで……プリーーーーズ! 『なになに、【弥生さん】以外にもあるじゃないか。【みんなを】……? 我々の事か? 【めし】……? ん?……飯? 【たく】……? 米を炊くという意味か? なんだ、よくわからんな。いや待て、続きがあるぞ。【ない】、なんだこれは。続けて読むと…………”みんなを、めし、たく、ない”? これは…………【みんなを滅したくない】なのか?……岡村、』
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