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近い距離で向かい合い、小声で僕らは話しているけど、後ろからはみんなの楽しそうな声が聞こえる。
僕の恋にあーだこーだと言ってるんだ。
中村さんはそんなみんなを視て、呆れたようにため息をついた。
『すまんな。みんなお前が好きなんだ。だから気になってしまうのだろう。悪気はないのだ、許してやってくれ』
「あ……はい。悪気がないのはわかります。ちょっと恥ずかしいけど、いや、かなり恥ずかしいけど、……ぐは。えと、その、僕、ダイジョブデス」
もういいの。
ヘタレな恋を笑ってくれ。
片想いはホントだもん、僕、開き直っちゃうんだから。
そうそう、笑って、もっと笑って。
みんなに残された時間は長くない。
だったらさ、なるべく笑顔でいてほしいよ。
中村さんは微かに口角を上げ、僕の頭をガシガシ撫ぜた。
そしてみんなに向かって大きな声を上げた。
『こら! お前達いつまでも笑うな! いいじゃないか片想い! たとえ想いが届かなくても、たとえ死ぬまで片想いでも、人を好きになるのは素晴らしい。そう、たとえ報われなくてもだ!』
え……ちょ……中村さん、何気に容赦無くないか?
や、そりゃそうだけど、わかっちゃいるけど、
『そっと応援してやれ。この先もしかしたら奇跡が起きて……いや、無理か。弥生さんは人の妻だと言っていたものな』
ぐは、ひでぶ。
だから、もう、ストレートに無理とか言わないで、
オブラート、オブラートに包んでください、
『まったく……岡村にも困ったものだ。なにもそんな所まで持丸を見習う事はないだろうに、』
え?
先代を見習うって、どういう意味?
先代も誰かに片想いをしていたの?
それでずっと独身だったの?
き、気になるっ!
ハッキリ言って、長なんかより全然気になっちゃうんだけど!
「中村さん、それってどういう意味ですか? 先代に好きな人がいたってコト? ずっと片想いだったの? 報われない系の恋だったの?」
山に来てから一番のやる気を視せて、中村さんに詰め寄るも答えてはくれなかった。
『……ああ……っと、しまった……ウッカリ口が滑ってしまった。すまない、岡村。持丸のプラーベートだからな、これ以上は話せない。いつか本人に聞いてくれ。
そんな事より第1班、第2班、第3班! 急いで霊体を温めろ! 長は火柱の向こうにいる。こちらから攻めに行くぞ!』
答えの代わりに気合が入った。
中村さんが不敵に笑う。
入れ替わるかのように、みんなは笑うのをやめた。
それぞれが印を結んで、慣れた武器を構築し……
おそらく次が、最後の戦いになる。
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