第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

194/267
前へ
/2550ページ
次へ
◆ 炎はいまだ激しく燃えていた。 男達は中の様子を霊視するも、ブロックされて視れないと舌を打つ。 『えぇっとー、さっきまでは視えたのです、はい。岡村君が霊矢をたくさん撃ったのも、ヘビヘビの霊体(からだ)の中に本体があったのも視えました。ですが……今はまったく視えません、はい……』 森木さんがショボンと肩を落とした。 他のみんなもおんなじで、杉野さんも大上さんも、高野さんも林さんも、みんな霊視を阻まれてしまった。 中の様子がわからないまま、闇雲に突っ込むのは避けたいところだ。 だって罠かもしれないよ。 視えなくて、焦れて突入した所に(おさ)が待ち構えてるかもしれないじゃない。 どうしたものか、いっそ僕が視に行くか。 大福に乗っけてもらって、筒の上から覗くんだ。 (おさ)は僕には攻撃しない。 これを利用しない手はないだろう。 「あの、僕が視に行きますよ」 小さく手をあげ言ってみた。 僕なら襲われない、いざとなったら霊矢も撃つからと。 だけどそれは止められた。 ポニテのいぶし銀、中村さんがリスクを仮定したんだ。 『……いや、岡村は行くな。それこそ(おさ)の思うツボかもしれないからな。上から覗いた途端、魂を喰われ乗っ取られるかもしれん』 「あ……確かに、その可能性はゼロじゃない。じゃあどうしたらいいかな。せっかくココまで追い詰めたのに……」 今回、僕はみんなに同行させてもらってる。 みんなが(おさ)に喰われたら、それを引っ張り出すのが僕の役目……だったけど、それに対して策を打たれてしまった。 (おさ)の炎は僕の鎖を拒んで溶かす。 ____ごめんなさい、次は助け出せないかもしれません、 僕がそう言った時、みんなは一瞬固まった。 だけど声を揃えて言ったんだ。 喰われたって大丈夫。 霊力(ちから)の欠片が守ってくれるからな。 (ヤツ)の腹で破壊されても、同時に修復してくれるんだ。 霊力(ちから)の相殺がされてる間にどうにか自力で脱出するさ。 そんな顔するな、心配するな、だって俺達は強いんだろう? 岡村がそう言ったんじゃないか。 救出と言う大事な役目が崩れたというのに、誰一人僕を責めなかった。 それどころか、欠片をくれてありがとうとまで言ってくれたんだ。 僕は……僕はさ、なんでもいいからみんなの役に立ちたくて、無理を承知で一緒に連れてってほしいと頼んだ。 霊矢なら撃てる、少しは役に立つはずだと食い下がり、それでも駄目だと言われるかと思ったら…… 『わかった、一緒に行こう。おそらく(おさ)霊力(ちから)は残り少ない。俺達が削ったのもあるが、さっき岡村はえげつないほど霊矢を撃った。あれで更に削られたはずだ。そうなると(おさ)は、何が何でもお前の身体を乗っ取ろうとするだろう。一人でいるより我々と一緒にいた方が良い』 中村さんが許可を出してくれた。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加