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『炎は俺にまかせろ、』
片眉をクイと上げて、咥えタバコで前に出たのは大上さんだ。
享年32才、この中では若い方のガンマニア。
ルーズに切られた髪の毛は、長くもないが短くもない。
細身の霊体の高身長で、口元はいつだって笑っているけど、一重の吊り目は黙っていると圧がある。
”瀬山の制服”をカッコよく着崩して、炎の前で仁王立ち。
”ワイルド”ってこの霊の為にあるコトバなんじゃないかと思うくらいだ。
口の端からタバコの煙を吐き出しながら、鼻歌交じりに構えをとった。
地面とほぼ平行に、上げた両手は段違いで高さが異なる。
一見細いだけに視える両腕の、一番先に黒光りするナニかが視えた。
あれは……ああ、やっぱりそうだよな。
大上さんと言えば拳銃だもん。
握っているのは自慢のデザートイーグルで、リアルを無視した改造品を左右両手に一丁ずつ、いわゆる二丁拳銃というヤツだ。
『おまえら少し下がってろ』
クールにキメたガンマンがそう言うと、みんなは一斉に走り出した。
大上さんから離れようと必死になって、僕も大福もそれにならう。
「大上さんはナニする気なの? 炎に銃を撃ったって消えないと思うけど!」
走りながらまわりのみんなに聞いてみた。
すると杉野さんが、それに答えた。
『言ったろ? 奴はなにかにつけちゃあ銃を撃つ! なんでも銃で解決出来ると思ってるんだ! ま、大抵本当にそうなるがな!』
なんでも銃で解決?
いや待て、ナニそれ、ツッコミどころが山盛りすぎる!
確かに威力は凄かった、さっき撃ったの視たけどさ、爆発炎上してたもの!
でもさ今回炎だよ? 火だし! 物体じゃないし!
撃ったところですり抜けるじゃーん!
さすがに、それは、HAHAHA、……なんて。
半笑いでいられたのは、僅か数分だけだった。
走る僕らの背後から、聞こえてきたのは発砲音____と、セットで謎の音。
ダンッ!!
ゴオオォッ!!
『始まった!』
翔君の弾む声、だがそれを轟音が掻き消した。
音を合図に立ち止まって振り向けば、燃え盛る炎の壁は砂塵にまみれて姿を乱し、右に左に斜めに上下に、激しく大きく揺れている。
なんで? どうして?
リアルを無視した改造は、炎さえも撃つと言うのか?
そんなバカなと目を凝らしてよく視れば、銃口は炎には向いてなく、斜め下を向いていた。
なんで下? 何を撃ってる?
ダンッ!!
ゴオオォッ!!
撃つたびに砂塵が上がった。
強い風が地から天へと吹き上がり、砂も小石も強制的に巻き込んて……いや、巻き込んでるのはそれだけじゃない、炎もだ。
長の火壁は下から風をまともに受けていた。
火に風が加われば、普通は火力が増すはずなんだ。
でも増さない。
風のチカラが強すぎるのと、連続で吹く風が、火の勢いを殺すからだ。
「炎を吹き消す気なんだ、」
独り言ちてよくよく視れば、銃は地面を撃っていた。
二丁拳銃で何十発も、撃って撃って撃ちまくる。
撃った弾の衝撃は、爆風を引き起こす。
その爆風が炎を消しにかかっていた。
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