第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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ダンッ!! ゴオオォッ!! ダンッ!! ゴオオォッ!! 止まらない銃声と謎の音、その正体が知れた。 ダンッ! と撃って、ゴオオォッ!! と鳴る。 撃った時の爆風が重たい音を出していたのだ。 銃口は休む事なく火を噴いていた。 リズミカルな速足で、炎のまわりの地面に向かって、発砲、発砲、発砲。 上がる砂塵は火に焙られて赤い色が透けていた。 だがそれも、時間と共に変化する。 辺り一面、薄茶だけが広がって、視界はすこぶる悪いけど、もう赤い色はどこにもなかった。 「本当に吹き消しちゃった……」 3階建てのビル相当、そんなドデカイ炎が消えた。 代わり、どこもかしこも砂の霧。 みんなは霊視に切り替えてるからダイジョブだけど、僕はダメ、ぜんぜん視えない。 ど、どうしよう……と、1人でアワアワしていると、ブワンッ! と強い風が吹き、広がる砂塵が彼方に消えた。 今のは大上さん……? いや、風は僕の後ろから吹いたんだ。 銃声もなかったし、じゃあ誰だと振り向けば、そこには中村さんがいた。 両手に大きな剣を持っていて……あ……! 剣圧か……! 『これで岡村も視えるだろう? それから目は擦るな。砂塵で傷付けるかもしれないからな』 そう言ってニコリと笑う。 視界が悪くて不便だろうと、砂塵を圧で飛ばしてくれた。 ありがたいなぁ。 それにさ、”目をこするな”とかも嬉しいよ。 なんだかさ、お父さんみたいだ。 「ありがとうございます。助かりました」 言いながら前を視る。 霧が晴れたその向こう。 僕は思わず息を呑む。 そこには銃を持った大上さんと、すぐ目の前に(おさ)がいた。 黙ったまんまで、2人は向かい合っているのだが……ダメだ! 近すぎる! あの距離で対峙だなんて危険だよ! 喰われても助けられない、自力で出るとか言ってたけどさ、成功するかわからないんだ! 「中村さん、みんなも! 大上さん助けに行きましょう!」 叫ぶように声を掛けた、みんなの返事も聞かないまま、僕は走り出そうとしたんだ。 でもその時、僕の大声を聞いた大上さんが、さらに大きな声を上げた。 『岡村ぁ! まだ来なくていい、とりあえず大丈夫だ。”俺ら全員で滅する”、だったよな? ちゃんと覚えてるよ。少しだけ、(コイツ)と話がしたいだけだ』 タバコを口に下げたまま、そう言って僕を制したんだ。 少しだけ話がしたいって……(おさ)と喋ったってツマラナイよ。 あの人、自分の話しかしないもの。 いいから戻ってきてよ、それか僕らがそっちに行くよ、無茶しないで、お願い、此処まできたのに、もしも喰われてしまったら、僕は一生後悔する事になる。
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