第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「中村さん……!」 そう言われたら見守るしかないけれど、それでも心配でいぶし銀の顔を視た。 『岡村、大丈夫だ。さっきもな、助けに行こうとしたんだよ。でも、こう手で制された』 中村さん達も行こうとしてたんだ……砂の霧で視えてなくて、わからなかった。 大上さん、(おさ)に言いたい事があるのだろう。 いや、ない訳ないか……山ほどあるんだろうけどさ、でも。 『この距離だ、イザとなったら全員で飛んでいくさ。なに、心配するな。おそらく時間はかからない、』 え……? そうなの? 手短に話す感じなのかな……? 中村さんが前を視て、みんなもとっくに前を視てて、僕は大福の毛皮に触りながら同じく前を視た。 (おさ)、また姿が変わってる。 蛇のストックが乏しくなったのだろうか? 今度は霊体(からだ)がない。 今の(おさ)は、最初に視たのと同じ、顔だけになっていた……が、まったく同じではない。 髪の代わりに無数の蛇を頭に生やし……そう、ギリシャ神話で似たキャラがいたようなと……と、そんな姿だ。 宙に浮かんで揺れてる(おさ)は、大上さんと目線を合わせて睨みつけている。 炎を消されて相当怒っているのだろう。 暫しの無言、先に話したのは大上さんだった。 『アンタ、俺の名前を知らないだろう? 俺らのコト、使い捨ての駒だと思ってるんだもんなぁ。名前なんかに興味はないか。まあいいや、改めて自己紹介してやるよ。俺の名前はキアヌ・〇-ブス、永遠の32才だ』 ………………はいぃ? 俺の名前はキアヌ・〇-ブス? や、ちょ、ナニ言ってんの? 大上さんだよねぇ? 大上(たく)さん、享年32才だよねぇ? なんでキアヌ?(すっっっごいカッコイイけど) ま、年は合ってる。 でも永遠の32才ってナニ? まあモノは言いようかもしれないけどさ。 てか、本当に話したいコトあるの? テキトウすぎじゃない? 顔、半笑いじゃない? まさかの自称キアヌ・〇ーブス。 僕はポカンで、(かける)君は霊体(からだ)をくの字に笑ってる。 大人達は『また言ってるよ』と頭を掻いて苦笑い。 『また』ってナニ?  突っ込みたいのは山々だけど、とりあえず僕らは2人を視守った。 いつでも走れる準備をしながら。
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