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「中村さん……!」
そう言われたら見守るしかないけれど、それでも心配でいぶし銀の顔を視た。
『岡村、大丈夫だ。さっきもな、助けに行こうとしたんだよ。でも、こう手で制された』
中村さん達も行こうとしてたんだ……砂の霧で視えてなくて、わからなかった。
大上さん、長に言いたい事があるのだろう。
いや、ない訳ないか……山ほどあるんだろうけどさ、でも。
『この距離だ、イザとなったら全員で飛んでいくさ。なに、心配するな。おそらく時間はかからない、』
え……? そうなの? 手短に話す感じなのかな……?
中村さんが前を視て、みんなもとっくに前を視てて、僕は大福の毛皮に触りながら同じく前を視た。
長、また姿が変わってる。
蛇のストックが乏しくなったのだろうか?
今度は霊体がない。
今の長は、最初に視たのと同じ、顔だけになっていた……が、まったく同じではない。
髪の代わりに無数の蛇を頭に生やし……そう、ギリシャ神話で似たキャラがいたようなと……と、そんな姿だ。
宙に浮かんで揺れてる長は、大上さんと目線を合わせて睨みつけている。
炎を消されて相当怒っているのだろう。
暫しの無言、先に話したのは大上さんだった。
『アンタ、俺の名前を知らないだろう? 俺らのコト、使い捨ての駒だと思ってるんだもんなぁ。名前なんかに興味はないか。まあいいや、改めて自己紹介してやるよ。俺の名前はキアヌ・〇-ブス、永遠の32才だ』
………………はいぃ?
俺の名前はキアヌ・〇-ブス?
や、ちょ、ナニ言ってんの?
大上さんだよねぇ? 大上拓さん、享年32才だよねぇ?
なんでキアヌ?(すっっっごいカッコイイけど)
ま、年は合ってる。
でも永遠の32才ってナニ?
まあモノは言いようかもしれないけどさ。
てか、本当に話したいコトあるの?
テキトウすぎじゃない?
顔、半笑いじゃない?
まさかの自称キアヌ・〇ーブス。
僕はポカンで、翔君は霊体をくの字に笑ってる。
大人達は『また言ってるよ』と頭を掻いて苦笑い。
『また』ってナニ?
突っ込みたいのは山々だけど、とりあえず僕らは2人を視守った。
いつでも走れる準備をしながら。
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