第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『そもそも____お前の名なぞ興味がない。ましてや、機嫌が良かろうと悪かろうと知った事ではない。わざわざ危険を冒してまで話す事か? 頭の悪い者は好かぬ。だが、私にとっては好都合。その汚れた魂を寄越すがいい。喰ろうて霊力(ちから)にしてくれる、』 口角が更に上がった。 皺の肌が無理に横に伸ばされて、不気味な面相を作り出す。 これはモタモタしてられない、すぐにでも行かなくちゃと、身体を前にした時だった。 『俺を喰う? ああやれよ』 僕は耳を疑った。 気が強い(ひと)だとは思ってた。 だけどその近距離で言う事じゃない。 いくら固定されていても、口だけで喰らうのだから。 売り言葉に買い言葉? だとしても此処は退くべきだ、でないと喰われる。 『ほう……随分と聞き訳がいいな。……ふむ、まだ僅かでも忠誠心が残っているのか?』 そんな訳ないだろうと、僕は脳内で突っ込んだ。 対峙するガンマンは、その突っ込みを遠慮なく表に吐き出す。 『はぁ? アンタこそ頭が悪いな。さっきの話聞いてたか? 忠誠心なんて最初からねぇよ。アンタ、自分の状況視えてんの? マル改のデザートイーグル、ドタマに二丁突き付けられてんだぜ? アンタが俺を喰らうより、引き金を引く方が早い。今のアンタじゃ防御しきれねぇだろ』 呆れた顔の大上さんは、置かれた状況を分からせようとしてるのか、銃口が埋もれる程に力を込めた。 そしてこうも続ける。 『アンタの霊力(ちから)、もう残り僅かだろ。変化(へんげ)がだんだんショボくなってるもんな。まさか消耗品の俺達に、ココまで追い込められるとは予想もしてなかったんだろうよ。ま、それに関しちゃ俺達もビックリだがな。 アンタの強みは攻撃よりも絶対的な防御にある。猛毒の小蛇をあの量で構築出来るのは大したものだと思うよ。蛇の霊体(からだ)の編み変えもそうだ。あんな事をされたらこちらの攻撃はすべて無効化される。だが、それらを封じられ、霊力(ちから)を消費するだけで補充が出来ない状況じゃあ、もうアンタもお終いだ。アキラメロ』 これ以上ないくらい冷たい目をしていた。 ”アキラメロ”と言った時、引き金の指がピクリと動く。 このまま滅してしまうのか? ”全員で”とは言ったけど、最後のトドメは誰かが刺すんだ。 ダイジョウブ、そう考えればみんなも納得するだろう。 リアルを無視した改造品、その威力を視せつけられた。 あの銃で撃てば、ほんの少し指に力をいれれば、(おさ)は消える。
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