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頭の蛇が力なく下がった。
顔の皺は深く刻まれ、目の周りは窪み真っ黒になっている。
張り付いた笑いは剥がれ、長は縋るようにこう言った。
『…………彰司に伝えてほしい事がある、……これまでの事を謝りたい』
「瀬山さんへの伝言、ですか……」
これには揺れた。
長がどれだけ酷い人でも瀬山さんの父親なのだ。
今此処に瀬山さんはいない。
父親の最期の言葉、しかもそれが謝罪の言葉だとすれば、伝えた方が良いのではと思う……でもな、謝りたいって本当かな、罠じゃないのかな。
急にしおらしくなるは変じゃない?
そう思うのに、キッパリと断れず小さく唸る事しか出来ない。
そんな僕に翔君は『騙されるな』と息巻いて、大人達は微妙な空気で渋い顔だ。
僕は迷っていた。
だが長は、良いとも言っていないのに、勝手に話し出したんだ。
『此処まで追い詰められれば逃げられぬ。悔しいがお前達の言う通り、私の霊力も残り僅かだ。これが……これが最期なのだと思うと、やはり浮かぶは彰司の顔だ。私は……瀬山の家を守りたかった。故にその思いが無理をさせてきたかもしれぬ。そういった気持ちを伝えてほしいのだ。頼む、少しだけ話を聞いてくれ、』
薙刀が突き刺さり、今では修復液も出ないくらいに弱ってる。
もしかしたら、このまま放っておいても消滅するのは時間の問題かもしれない。
僕はどうしたらいいんだろう、僕は____
「……わかりました、」
僕がそう答えると、翔君が声を荒げた。
『岡村っ! 騙されるなって言ってるだろ! お前は人を信じすぎだ! 長は絶対に嘘をついてる! 悪い事を考えてるんだ!』
言葉はキツイ、でも少年は僕を庇うように抱き着いて、長を睨みつけている。
「ごめんね、心配だよね。……あのね、伝言聞くだけ。聞いたら伝えるだけだから。瀬山さん、今此処にいないでしょう? もしかしたら聞いておきたかったってなるかもしれないじゃない」
『それは……そうかもしれないけど』
「大丈夫、長と距離を取る。手短に、聞いたらすぐ、みんなで滅そう」
言いながら、心の中は激しく揺れていた。
長の話を聞く……これが本当に正しい事なのか、僕に判断がつかない。
それでも聞こうと思ったのは、もしかしたら……最後の長の言葉が、瀬山さんを救うかもしれないと期待したからだ。
だけどこれは、僕だけの判断じゃ駄目だ。
みんなに聞いて、それで良いかを聞いて、それから。
「翔君、大上さん、中村さん、……みんな。瀬山さんへの最後の伝言、聞いてもいいかな? ……正直、無視してもいいとは思うんだ。でも、もしかしたら、長の言葉が瀬山さんを救うかもしれないじゃない。過去は変えられないけど、長のした事は取り消せないけど、それでも、たった一言謝罪の言葉があるのと無いのとでは全然違うと思うんだ、……どうかな? もちろん、みんなが反対なら聞かない。……僕達はトゥエンティーエイトマンセル、28人でひとつのチームだからね」
僕はみんなの顔を視た。
みんなは、なんて言うだろう。
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