第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『お前達、準備は良いか?』 ポニテのいぶし銀、中村さんが輪になるみんなに最終確認をする。 頭から蛇を生やした最終形態。 霊体(からだ)は無くて、顔だけがそこにある。 頭を貫く薙刀は、地中深くに突き刺さり、まるで姿は晒し首だ。 僕ら全員で突き付けた武器、その数は28。 ギチギチに重なり合って、隙間もなくて、逃げ道なんてどこにもない。 万が一、(おさ)が自爆覚悟で来ようとしても、この体勢さえ崩さなければ、先に撃つのは僕らの方だ。 絶対負けない、なんてったって”日本で一番の霊能軍団”と、新人霊媒師の僕が(なんかおまけみないだな)取り囲んでいるのだから。 『いつでもいいぜ』 『やっとだな』 『今までに喰われた奴らも、これで救われる』 それぞれがそれぞれに返事をした。 (おさ)の嘘に騙されかけた僕も「準備OKです」と答える。 結局、皆で揃ってトドメを刺すことにしたんだ。 今まで受けた理不尽も暴力も強制も、今まで感じた悲しみも辛さも絶望も、最後の一撃に混ぜ込んで浄化させようと決めた。 滅した後は、せーのでみんなで笑おうとも約束した。 そしてその後は……僕がみんなを解放するんだ。 僕はその時、うまく出来るだろうか。 心は込められる、これはダイジョブ、自信があるよ。 お疲れさまでした__うん、きっと言える。 ありがとうございました__これも、言える。 でも、泣いてしまうだろうな。 この霊達(ひとたち)は、沢山の事を教えてくれた。 特に中村さん、生前は新人霊媒師の教官だもの。 駆け出しの僕にあれやこれやと教えてくれた。 さっきだってそうだ。 (おさ)の嘘を分かっていながら、【悪霊に付け込まれたらどうなるかを今学べ】と、あえて僕の好きにさせようとした。 あれは……僕のこれからを心配してくれたからだ。 現場で困らないように、怪我をしないように、命を落とさないように。 そしてもうひとつの理由も教えてくれた。 ____岡村に何かを教えれば、 ____岡村がそれを生かしてくれたら、 ____我々の魂は消えて尚、 ____お前の中で生き続ける、 ____そんな気がするんだよ、 そう言われると、そうかもしれないなぁと思う。 魂が消えてもさ、僕が覚えている限り、みんなは僕の中に存在するんだ。
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