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いよいよだ。
みんなの顔つきが変わった。
グルリと狭く取り囲み、長に向かって隙無く武器を突きつける。
極近の全包囲、
絶対に外さない、
撃つは一瞬、
長を滅する、
これですべてが終わるんだ、
輪の中心では、長が黙り込んでいた。
さすがに観念したのだろうか?
目を伏せて、口も閉じて、頭の蛇も頭をダラリと垂れていた。
緊張が走る中、中村さんがカウントを取り始めた。
”5”から下がって、最後の”0”で撃つ。
『____5、』
長かったな、やっとだな、
『____4、』
翔君が歯を食い縛って泣いている。
辛かったよね、悔しかったよね、キミは本当に素直な良い子。
僕に兄弟はいないけど、弟だったら良いのになって本気で思うよ。
『____3、』
大人達はさすがだよ。
思う所はたくさんあるはず、それでも涙は視せずに鋭い顔だ。
でもきっと、すべてが終われば泣くんだろうな。
『____2、』
中村さん、……僕にはね、たくさんの師匠がいるんだ。
先代、瀬山さん、おくりびのみんなに大福もそう。
もう一人、大事な師匠が増えてしまった。
ありがたいな、感謝だな。
出来れば、この先もっと色々教えてほしかったな。
『____1、』
長……瀬山さんのお父さん。
損得だけが物差しで、愛情を理解出来ずに否定する。
僕がこの霊と分かり合う事はないのだろう……あ、
今、……長と目が合った、
伏せていたはずなのに、
白濁の皺の目が僕を捉えて離さない、
なんだ?
…………何か……言ってる?
口が、長の口がゆっくりと動く、
声は無く、
何を言っているのか、
それが何なのかが知りたくて、
ほんの少し身を乗り出して、
その口を、
あの口を、
ジッと視つめて、
シュッ、
何かが飛んできた。
とても小さな何かだ。
早くて何かは分からなかった、____でも。
「……痛っ」
首に鋭い痛みが走った。
途端、ジンジンと熱を持ち、痛いのか熱いのかわからなくなる。
グラリと視界が回る。
カウントゼロまであと一つ。
それなのに何が起きた?
意識が急激に薄くなる。
遠くから声が聞こえる。
____岡村っ……しっかりしろ……なにがあった……
____これは……蛇……小蛇が残ってた……岡村を噛んだんだ……
____大橋と……近藤……岡村を視ろ……
____他の者は長を……絶対に逃がすな……
____だが滅するなよ……滅すれば岡村が……
みんなの怒鳴り声、翔君の泣き叫ぶ声、
耳の中がワンワンして、すごく頭に響くんだ、
その頭の端の方で、やけにはっきりとした声が聞こえた、
その声は低くて、ザラついて、不愉快で、
『岡村、……捕まえた、』
長の声だった。
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