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◆
薄い意識の中を彷徨っていた。
身体がダルくて目が開かない。
閉じた目には何も映らないというのに、頭がグルグル回ってる。
回転性の眩暈だ。
まるで船酔いみたいでキモチワルイ。
あれ……僕……どうしたんだっけ?
確か……カウントの途中だったはず……長をみんなで滅そうと、武器を構えてたんだ。
それで……?
ああ……そうだ、カウントもあと一つとなった所で……何かに、いや……長の小蛇に首を噛まれた。
それから……意識が遠のいて……みんなの怒鳴り声と……翔君の泣き声が聞こえて……あと……長の声が……頭の中に直接聞こえたんだ。
長は僕に『捕まえた』と言っていた。
捕まえたって……どういう事?
僕は小蛇に噛まれたけど、こうして今、自我を持ってる。
という事は魂を喰われたんじゃないのだろう。
小蛇には毒があるけれど、長は僕を傷付けられない。
だから大丈夫なはずなんだ……眩暈はするけど、身体はやけにダルいけど。
……
…………ちゃん、
………………えい……
……………………えいみ……ちゃん、
誰かが……僕を呼んでいる?
身体を揺さぶられ、眩暈の頭が更に回って吐き気を催す……が、気持ち悪いはずなのに、僕の胸はバクバクと躍り出し、それどころではなくなった。
「エイミーちゃん、大丈夫か? しっかりしろ」
心配そうな色を帯び、僕の名前を何度も呼ぶのは、酒に焼けたハスキーボイス。
出来る事なら毎日だって聞きたい声だ。
僕は気持ち悪いのを我慢して、気合を入れて目を開けた。
「あ、目ぇ覚ましたっ!」
僕の顔を覗き込む、猫のような大きな目と視線が合った。
やわらかそうな白い肌、通った鼻に、グロスの塗られた艶の唇。
華奢な肩は儚げで、いつもの黒いワンピース。
伸びかけの短い髪が僕に向かって垂れていて……
「…………弥生さん、……どうして?」
頭が混乱する。
驚きと喜びと胸の高鳴り。
いるはずのない好きな人が「良かった……」と大きく息を吐いていた。
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