第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「なんでアタシがいるかって? 先代に呼ばれたんだよ。たまたまW県近くの現場に入ってたのが昨日終わってさ。帰ろう思ったら、修行中の事故でエイミーちゃんが倒れたから来てくれないかって頼まれたんだ。ほら、先代も瀬山さんも幽霊だし野郎だろ? 応急措置はしたけど、看病の仕方が分からなかったんだって」 ソファの上にドカッと座り、そう言った弥生さんはケラケラと笑った。 僕はと言えば、小さなベッドに寝かされているのだが……ココ、どこ? 「ココか? 山の近くのビジネスホテルだよ。W県に着いてから、山までタクシーで迎えに行って、その足でホテルに来たんだ。エイミーちゃんを運んだのはタクシーの運ちゃんでさ、”酔っぱらった弟を休ませたい”って言ったら、部屋まで運んでくれたの」 そ、そっか。 弥生さんにも運転手さんにも迷惑かけちゃったね、ごめんね。 「ぜんぜん! とりあえず、大した事なさそうで安心したわ」 事情が分かった所で、僕はベッドの上で半身を起こした。 弥生さんは無理するなと言ったけど、なんとなく落ち着かないし、眩暈もだいぶ治まった。 中を見れば飾りのない四角い部屋で、あるのは弥生さんの座っている小さなソファに小さなテーブル。 窓は一ヶ所、大き目だけど曇っているのか薄暗い。 テレビとかお茶セットとか、余計なモノは一切無い、そんな部屋だった。 「ねぇ、弥生さん」 話しかければ「なんだぁ?」なんてお気楽だ。 その顔がやけに眩しく、話しかけておきながら目線を外してワザとらしい咳をした。 「……や、その、(おさ)……、(おさ)はどうなったか聞いてる? それからみんなは? 大福はどこにいるのかな、」 弥生さんがどこまで聞いているかは分からない。 だけど僕は霊視が出来ないから、聞いてるかぎりの事でいいから知りたかったんだ。 (おさ)を滅する、それはみんなの切願だ。 カウントもあと一つという所で、僕がヘマをしたんだ。 小蛇なんかに噛まれてしまって、一撃を中断させてしまった。 僕なんかは放っておいて、滅してくれてればいいんだけど……
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