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「弥生さん……どうしたの? ……あ、ごめん、疲れちゃった? 現場が終わって、そのまま僕の面倒見る事になっちゃったんだもんね。ごめん、僕はもう大丈夫。起きるからベッドで横になってよ。僕が使った後で悪いけど、」
言いながらベッドから降りようとした。
けど弥生さんがそれを止めた。
「大丈夫、疲れてないよ。知ってるだろ? アタシ、体力オバケだからさ。どんなに動いても疲れないんだ」
「た、確かに。弥生さん、タフだもんね」
「エイミーちゃんこそ無理しないで、まだゴロゴロしてな。あとでご飯を食べに行こう。大丈夫、ホテル代もご飯代も、ぜーーんぶ今回会社持ちだ! お高いお店に行こうぜ! ほら……その……エイミーちゃんがいない間に色々終わってて……落ち込んでるんだろ? そんな感じがしたからさ、」
「あ……うん。ありがとう。正直ショックだった。最後にみんなに会いたかったからさ。……な、なんかごめんね。弥生さん、今の僕といると気詰まりだよね。も、もう大丈夫、多分。落ち込むのは家に帰ってからにする。だからさ、さっき言ってた、その、お高いお店に行こう! おいしいものを食べるんだ。あ、でも僕、泥だらけのジャージ上下なんだけど。こんな格好でお高いお店入れない……」
これじゃあ、弥生さんにまで恥ずかしい思いをさせちゃうよ。
お高いお店は諦めるしかないかな。
「あーそーだなー。んじゃあさ、服も買っちゃえ! すっとぼけて服の領収書も提出しちゃえばさ、ユリちゃん優しいから、なんとかしてくれるよ」
「な、な、なんてコトを……! でも良い考え……ちょっと良い服買っちゃおっかな」
調子に乗って冗談を言ってみる。
僕と弥生さんは顔を見合わせて笑ってしまった。
笑った後、ふと目を伏せた弥生さんは、また淋し気な表情になった。
「弥生さん……なにかあった? なんかヘンだよ」
気になって聞いてみる。
すると、
「やぁ……ごめん。エイミーちゃん、体調悪いのに気ぃ遣わせちゃった。あのね、……ん……最近少し悩んでてさ。……ジャッキーとマジョリカの事で、」
弥生さんは2人の名前を出した途端、唇を噛んだ。
どうしたのかな、ケンカでもしたのかな。
「ジャッキーさんとマジョリカさんがどうしたの?」
「……ああ、うん。アタシ、やっぱりあの2人にはついていけない。……もう別れたいなぁって思ってるんだ。あはは、笑っていいよ。あんなに大騒ぎしたクセにな」
あははと笑った弥生さんは、ちっとも笑っていなかった。
両目から、涙がつぅと流れ落ちる。
それを見た時、僕は思わずベッドから飛び降りた。
そしてソファの前で膝を着き、
「なにがあったの?」
そう聞いていた。
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