第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

212/267
前へ
/2550ページ
次へ
「…………エイミーちゃん、そういう事言うの? ヒドイよ……エイミーちゃんならアタシの辛さ、分かってくれると思ったのに」 恨めしそうに僕を見たあと、弥生さんは顔を伏せグズグズと泣き出した。 その瞬間、僕の心臓が縮み上がった。 「ごめん、違うんだ、僕はいつだって弥生さんの味方だよ、本当に、絶対だ。誤解させたならごめん、責めたんじゃない、ただ、ジャッキーさんもマジョリカさんも弥生さんの事が好きだし、ヤヨちゃんも含めて4人は家族じゃない。愛情に順位なんてつけないし、マジョリカさんが優越感で弥生さんをバカにする事もしないよ、」 しどろもどろで言い訳をする、泣かしたくて言ったんじゃない。 笑ってほしくて、いつもみたいに元気になってほしくて、なのに僕はダメだな、ああ、でもダメだと嘆いてる場合じゃない、泣き止んでもらいたい。 僕は必死だった、弥生さんの方がトークは千倍立つけど、それでもなにか面白い事でも言えば笑ってくれるかな、と、下手なギャグを言ってみたりもした。 「……エイミーちゃん、アリガト、ゴメンネ」 掠れた声がしたのと同時、弥生さんは顔を上げた。 近い距離で目が合って言葉に詰まる。 キレイだなぁと不謹慎にトキメキながら、どうにかこうにか「大丈夫?」と聞いた。 弥生さんはコクリと頷き、意図してなのか、そうでないのか、いや、意図なんかしてるはずはないのだけど、このあとの弥生さんの言葉に僕はコロサレかけたんだ。 「アタシ……エイミーちゃんと一緒になれば良かった。本当はね、知ってるんだよ。エイミーちゃん、アタシの事好きだろ」 …………いつバレた? 隠せてなかったのか? 動揺して黙り込んだ僕は、気持ちを肯定したのとおんなじだ。 それに後から気付いたがもう遅い。 「やっぱりな、そうじゃないかと思ってた。アタシはアタシだけを見てくれる人がいいよ。やっぱり、その方が幸せになれる。エイミーちゃんはアタシだけを見てくれるだろ? ねぇ、アタシと一緒にいて。いてくれるなら、ジャッキーと別れる」 「や……その……えと……んと……」 僕は何を言ってるんだ? 答えになってないじゃないか。 テンパって、頭の中がパチパチ弾けて考えがまとまらない。 さっきから弥生さんは何を言ってるんだろう? 憎からず思ってくれてるって事? 弟とか、友達とか、後輩とか、そういうんじゃなくって事? 本当に……?
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加