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キィィィィィィィィィィィ………………
なんだ……?
自分で自分を……と覚悟を決めかけた時、どこか遠くから異音が聞こえた。
長が何かしてるのか……?
いや……長も戸惑っている。
僕に向けた人差し指を止めたまま、目線を右に、左に、……そして窓に向けた。
窓……?
あの向こうは何もなかったはずだ。
ただ白い世界が広がって、果てがないのが不安にさせた……が、その方向に神経を集中させると、確かに音は窓の方から聞こえてくる。
何だろう……なんとなくの防衛本能。
僕は1歩、2歩と後ろに下がった、長を視て、窓も視て、……その瞬間だった。
ガシャーーーーーーーーンッ!!
ソプラノの爆音がした。
同時、大きな窓が粉砕されて、キラキラ輝くガラスの欠片が渦を巻いて舞い降った。
突然開いた窓からの、吹き込む風はすこぶる強くて、ガラスを床に落としてくれない。
危なくてまともに目が開けられなかった。
極限まで目を細め、ナニが起きたかそれを知ろうと必死になったんだ。
薄く開けた視界の中に、2つの人影が映り込んだ。
どちらも細身。
シルエットは似てるけど、1人は短髪、もう1人は長めの髪がサラサラとなびいてる。
『岡村君、』
『岡村さん、』
ガラス吹雪の中心で、僕の名前を力強く呼ぶ声がした。
この声……嘘だろ……来てくれたんだ……
でも……でもさ、此処は長しか出入りできないんじゃなかったの?
なのにどうやって……ああ、そんなのどうでもいいや。
いつだって助けてくれる、いつだって見放さない。
不可能を可能にするのは、この人達の十八番じゃないか。
一気に涙が込み上げる、我慢出来ずに溢れ出す。
ガラス吹雪が収まりを見せ始め、薄い影がハッキリしだす。
そして、重なる声が言ったんだ。
『『 待たせたね、迎えに来たよ 』』
現れたのは、僕の偉大な師匠達。
大好きな先代と瀬山さんだった。
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