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「先代! 瀬山さん! 僕……僕……ごめんなさい、ヘマしちゃった。長の小蛇に噛まれたんだ。来てくれて嬉しい、めちゃくちゃ嬉しい……! ……あっ! そうだ、あの、みんなと大福はどこにいるの? 無事だよね?」
良い年して大泣きだった。
気が張っていたのがプツッと切れて、安心して緩んでしまって、僕はダメな大人になっていた。
『大丈夫、泣かないの。みんなも大福ちゃんも山にいるよ。岡村君の身体もだ。みんなは長の本体の方を拘束中だよ。ここにいるのは半分本物、もう半分は幻影だからね』
ああ……良かった……僕は先代の言葉にホッとしたんだ。
長は嘘つき、言ってる事はデタラメだから、きっとみんなは無事でいると踏んでいた。
でもそれはあくまで予想だもの。
こうやって教えてもらって、ようやく心から安心出来た。
『岡村さん、ごめんね。また父が迷惑をかけたね』
悲痛な顔で僕に謝るのは瀬山さんだ、ううん、瀬山さんは悪くない。
血が繋がっている事と、長の罪はまったくの別物だ。
僕は長が大嫌い、でも瀬山さんは大好きだもの。
その大嫌いな長。
いい加減弥生さんの姿を解いてくれと思うのに、美女ビジュアルのまんまで唇を噛み締めている。
『彰司……持丸……何故だ……どうやって此処に入った……私の霊力で造った、私の霊力に反応する、私の霊力でなければ干渉は不可能なはず……』
長……すごい悔しそうだ。
どうやって突破したんだろ……ま、僕にとってはどうでもいい話だ。
2人が来てくれただけで胸がいっぱいだもの。
だけど、それに瀬山さんが答えた。
ただの回答じゃなく、親子の会話になっていく。
『父様……お忘れですか? 私はあなたの息子です。良くも悪くも血の繋がった親子なんですよ。父様と私の霊力はよく似ています。だから干渉も出来るのです』
見た目は儚げな少年だ。
細い肩、薄い背中、澄んだ瞳はあまりにも清らかで、息子であると改めて訴える姿に泣きそうになる。
『息子……? ああ……そうらしいな。だがそれも昔の話だ。裏切者のお前を息子とは認めない。それよりも、私とお前の霊力が似ていると言ったが、完全に一致はしていないはずだ。なのにどうやって此処に来た、』
ギロリと息子を睨む。
弥生さんの猫の目が虎の目に変わる。
『…………簡単です。父様の霊力より、私の霊力の方が強いのですから。父様が構築された空間、これを私の霊力で一部再構築しました。故に出入りは自由、改変も拡張も自在、そしてもちろん破壊もです』
悲しそうな目だった。
こんな事言いたくないと、そんな色が濃く滲んでいた。
それに対し長は目を吊り上げて睨みつけている。
『お願いです……これ以上罪を重ねないでください。私も父様も生きていた頃、一緒に現場に出た事がありましたよね? その時、悪霊に向かって仰ったじゃないですか「往生際が悪い、」と。同じ事を言わせないでください。どうか潔く、罪を認めて見事滅されてください』
瀬山さんの懇願に沈黙だ。
視てられない、瀬山さんがあまりにも辛そうなんだもの。
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