第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「先代! 瀬山さん! 僕……僕……ごめんなさい、ヘマしちゃった。(おさ)の小蛇に噛まれたんだ。来てくれて嬉しい、めちゃくちゃ嬉しい……! ……あっ! そうだ、あの、みんなと大福はどこにいるの? 無事だよね?」 良い年して大泣きだった。 気が張っていたのがプツッと切れて、安心して緩んでしまって、僕はダメな大人になっていた。 『大丈夫、泣かないの。みんなも大福ちゃんも山にいるよ。岡村君の身体もだ。みんなは(おさ)の本体の方を拘束中だよ。ここにいるのは半分本物、もう半分は幻影だからね』 ああ……良かった……僕は先代の言葉にホッとしたんだ。 (おさ)は嘘つき、言ってる事はデタラメだから、きっとみんなは無事でいると踏んでいた。 でもそれはあくまで予想だもの。 こうやって教えてもらって、ようやく心から安心出来た。 『岡村さん、ごめんね。また父が迷惑をかけたね』 悲痛な顔で僕に謝るのは瀬山さんだ、ううん、瀬山さんは悪くない。 血が繋がっている事と、(おさ)の罪はまったくの別物だ。 僕は(おさ)が大嫌い、でも瀬山さんは大好きだもの。 その大嫌いな(おさ)。 いい加減弥生さんの姿を解いてくれと思うのに、美女ビジュアルのまんまで唇を噛み締めている。 『彰司……持丸……何故だ……どうやって此処に入った……私の霊力(ちから)で造った、私の霊力(ちから)に反応する、私の霊力(ちから)でなければ干渉は不可能なはず……』 (おさ)……すごい悔しそうだ。 どうやって突破したんだろ……ま、僕にとってはどうでもいい話だ。 2人が来てくれただけで胸がいっぱいだもの。 だけど、それに瀬山さんが答えた。 ただの回答じゃなく、親子の会話になっていく。 『父様……お忘れですか? 私はあなたの息子です。良くも悪くも血の繋がった親子なんですよ。父様と私の霊力(ちから)はよく似ています。だから干渉も出来るのです』 見た目は儚げな少年だ。 細い肩、薄い背中、澄んだ瞳はあまりにも清らかで、息子であると改めて訴える姿に泣きそうになる。 『息子……? ああ……そうらしいな。だがそれも昔の話だ。裏切者のお前を息子とは認めない。それよりも、私とお前の霊力(ちから)が似ていると言ったが、完全に一致はしていないはずだ。なのにどうやって此処に来た、』 ギロリと息子を睨む。 弥生さんの猫の目が虎の目に変わる。 『…………簡単です。父様の霊力(ちから)より、私の霊力(ちから)の方が強いのですから。父様が構築された空間、これを私の霊力(ちから)で一部再構築しました。故に出入りは自由、改変も拡張も自在、そしてもちろん破壊もです』 悲しそうな目だった。 こんな事言いたくないと、そんな色が濃く滲んでいた。 それに対し(おさ)は目を吊り上げて睨みつけている。 『お願いです……これ以上罪を重ねないでください。私も父様も生きていた頃、一緒に現場に出た事がありましたよね? その時、悪霊に向かって仰ったじゃないですか「往生際が悪い、」と。同じ事を言わせないでください。どうか潔く、罪を認めて見事滅されてください』 瀬山さんの懇願に沈黙だ。 視てられない、瀬山さんがあまりにも辛そうなんだもの。
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