第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『平ちゃん、』 (おさ)を真っすぐ視つめる瀬山さんが、先代に声を掛ける。 『ん、』 なんとも短い返事だ。 先代は不貞腐れた少年の顔で、親子を視続けていた。 『岡村さんと一緒に先に戻ってて。私はもう少しだけ父と話したいから』 『んー、そう? こんなヤツと話したって時間の無駄だと思うけど』 あ……先代、話し方がいつもと違う、なんか、こう、若い。 『あはは、ごめん。……僕も(・・)ね、そうかなって思うよ。でも、最後だから』 あ……瀬山さんもだ。 自分の事、”僕”って言ってる。 きっと昔、うんと若い頃はこうだったんだろうな。 2人は今、昔に戻ってるのかもしれない。 『ショウちゃん、本当に大丈夫かよ。またコッソリ大泣きするんじゃないのか? (おさ)と話すと決まって後で泣いてたもんな』 『そ、そんな事ないよ! 大丈夫、心配しないで』 『ふぅん、ま、いいけど。じゃあ先に戻ってる。ショウちゃんが作った道使えばいいんだろ?』 『うん、平ちゃんと岡村さんなら通れるから。ごめんね、勝手な事言って』 『そんなのいいよ。そのかし早く帰って来いよ? わかったか?』 『う、うん。約束』 あらら、これじゃあどっちが年上か分からないや。 でもすっごく仲良さそうだ。 『行こう、』 僕に向かって手を差し出した先代は、ちょっぴり恥ずかしそうだった。 若い頃の話し方を僕に聞かれて照れているのかもしれない。 若い姿の先代が、僕の手を引き窓に向かう。 それを(おさ)が怒鳴り止める。 『待てっ! 岡村は私のものだ!』 振り向けば、真っ赤な目で僕を視る(おさ)と、後ろ姿の瀬山さん。 先代は面倒そうに『いいよ、行こう』と無視をする。 そこに(おさ)が更に怒鳴った。 『何故そこまで邪魔をする……! 生き人ならいざ知らず、持丸も彰司も死人(しびと)ではないか、貴様らは黄泉に逝けるのだろう? それなら大人しく黄泉で暮らせば良い。現世で何が起ころうとも貴様らに関係のない事だろうが……!』 はー、と雑なため息をついた先代は、空いてる手で耳をほじっているのだが、真面目に聞く気はなさそうだ。 (おさ)は当然話続ける。 聞いてようと聞いてなかろうと関係ないみたいだ。 『ましてや、せっかく希少の子として生まれたのにも関わらず、30年もそれに気付かない愚か者を庇う必要があるか? もっと早くに気付き修行をしていれば、今頃凄まじい霊媒師になったであろうに……! 30過ぎて今更修行をした所で高が知れている。ならば私が身体を貰って、希少の霊力(ちから)を生かしてやろうと言うのだ……! 感謝されてこそ、邪魔される言われはない! 消されて当然の小僧なのだよ!』 あれま、スゴイ言われようだな。 突き抜けすぎてて腹も立たない……と思ったのは僕だけだったみたいで。 この後、先代が暴走した。
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