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あ、と思った時、先代は僕の手を離していた。
一瞬で移動したのか、弥生さんの姿をした長の前にいる。
パーソナルスペースなんて知った事か! な、近距離で顔を斜めに詰め寄った。
『消されて当然? ソレ、オマエの事だよな?』
それは凄みのある声と口調だった。
あれ……? えっと……先代だよね?
『私ではない、だから、』
長が言いかける、が、それをバッサリぶった切る。
『岡村は”おくりび”の三男坊だ。俺の大事な大事な息子なんだよ。俺の息子が消されて当然? ふざけんなヘビ野郎。オマエこそ今すぐココで滅してやろうか?』
や、ちょ、先代……?
僕のコト呼び捨てになってるよ?(ぜんぜん良いけど、ウェルカムだけど)
それと今、社長と弥生さんと水渦さんとジャッキーさん(ガチギレ時)を混ぜ合わせた感じになっちゃってますけど、いつものキャラと全然違うんですけど、ちょ、先代?
『……き、貴様、持丸、誰に向かって口を聞いている、』
怒りで顔を真っ赤にした長が声を震わす。
が、先代の勢いは止まらない。
『誰に向かって? オマエだよ、オマエ!! 目の前で! オマエ視ながら話してるんだ! それくらい分かれ! つか大物っぽく振舞うな! 腹立つー!!』
フンガー!!
先代キレまくりだよ、もうキャラ崩壊だよ。
『岡村くんが作ったスィートポテト! んまいねぇ♪』
なんてニコニコ笑う、かわゆすキャラが行方不明になりました。
こりゃあ、若い頃の話したがらない訳だわー。
このフンガーキャラを収める事が出来るのは、親友である瀬山さんしかいないのだが、扱いは慣れたものだった。
『平ちゃん、落ち着いて。岡村さんがビックリしてるよ。僕、手短に話すから、話したら山に戻るから、そしたらみんなに滅してもらおう? 若者達が頑張ったのに、最後のトコだけ年寄りがしゃしゃり出たら嫌われちゃうよ! いいの?』
腰に手をやり諭すように。
瀬山さんはどこまでも優しくて、先代は『若者達が頑張ったのに』にめっちゃ反応してたんだ。
『あっ、そうだよな! 悪い、俺、カーッとなった! 中村にも怒られるトコだったよ。ごめんショウちゃん。そんじゃあ、先に戻ってる! 早く帰ってきてな! 岡村、行くぞ!』
大反省の先代は、瀬山さんに素直に謝り僕の手を取った。
まだ僕を呼び捨てにしてるけど、テンパってるのか気付いてない。
瀬山さんは小さく手をフリフリしてて、それでも、飛び掛かる長を片手で止めた。
『トゥ!』
僕の手をしっかり握り、先代は窓から飛び降りる。
いきなり床がなくなって、「わーーーーーっ!」と叫ぶヘタレな僕に、先代はゲラゲラと笑っていた。
下を視れば、たくさんの花が咲くキレイな道が視えたんだ。
あれが瀬山さんの作った道なんだな。
それにしても……僕は昔、お花屋さんでバイトをしてたのに、あの花は視た事がない。
不思議だな……赤、青、黄、紫、ピンク……多色に咲き乱れるその花たちは、時間で色を変化させていた。
どれだけ視てもちっとも飽きない、あれはこの世の花じゃない。
そうだ……前にジャッキーさんから聞いた事がある。
たしか花の名前は【百色華】だったはずだ。
黄泉の国だけに咲く、特別な花。
「キレイだなぁ」
山に帰る道のりを、僕と先代は虹の色を楽しみながら戻っていったのだ。
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