第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『俺達さ、ずっと待ってたんだ。彰司さんと持丸さん、絶対誰も入れないと思ってた(おさ)のフィールドに入って行ったし、あの2人はスゴイ人達だから大丈夫。必ず岡村を助けてくれるって信じてさ。でも……そうは思っても怖かった。岡村が死んじゃったらどうしようって、俺、不安で不安で仕方なかったよ』 鼻をズルズルすすりながら、僕にピッタリくっつく(かける)君がそう言った。 僕を待ってる間、余程不安だったのだろうと思うと、胸が苦しくなってしまう。 そしてくっつき虫は(かける)君だけじゃなかった。 僕のスーパースィートハニー、大福もおんなじで、(かける)君とは反対側でピタッとくっつき、虎の子サイズの大きな舌で僕のほっぺをザリザリと舐めている(肌がヒリヒリするくらい)。 そうかと思うとこの猫は、僕の肩とか腕とか足とか頭とか……要はありとあらゆる所をひっきりなしに甘噛みするんだ。 元々甘えん坊な子ではあるけど、この激しい甘えっぷりは相当心配をかけてしまったのだなと、僕はめちゃくちゃ反省し、両手で1人と1匹をギュウッと抱き寄せた……って、ひょー、冷たー、ブルブル……両サイドから霊達に挟まれると、めちゃくちゃ冷えるな。 けどココは辛抱、心配かけた僕がワルイの、こんなんで安心してくれるなら、僕、頑張っちゃうんだから。 山に戻ってから、どのくらいの時間が経ったのだろう。 僕達は瀬山さんの帰りを待っていた。 ____最後だから そう言って、父親と話がしたいとフィールドに残った瀬山さんは、今頃なにを思うのかな。 僕と(かける)君と大福は、(おさ)の顔の前で体育座りをしていた。 他愛のない話をしながら、相変わらずデザートイーグルを突きつけたままの大上さんに時々突っ込まれながら、一緒になって見張っていたんだ。 目の前の(おさ)は、固く目を閉じたまま、顔をしかめたり唸ったりと小さな変化を視せていた……が、依然意識はないままだった。 一体フィールド(むこう)で何を話しているんだろう? 此処にいる僕以外、誰もかれも息をするように霊視が出来るけど、親子の会話を覗こうという(ひと)は1人もいない(ブロックもされてるけど)。 ただただ、おのおの好きなコトをしながら瀬山さんの帰りを待っていた。 そして先代だ。 僕と一緒に戻ってきた先代は、今までどこにいたのか、それは聞いても教えてくれなかった。 だけど、 『ずぅっと視てましたよ。本当に危なくなったら行くつもりでした』 ちゃんと見守っていてくれてたみたいでさ。 きっと、何か考えがあっての事なのだろう。 (おさ)を前に2人は、『私達が行くからっ!』と言っていたんだもの。 それがパタリと消えたのは事情があるんだ、それを今は言えないというのなら無理して聞くつもりはない。 先代は今、あっちこっちと歩きまわって、みんなと話をしてるようだった。 昔の先代を知ってる(ひと)も知らない(ひと)も関係なしに、目が合えば近付いて話し込んでいる。 こっちはこっちで何を話してるんだろうな。 まぁでも、先代も”元瀬山の霊媒師”だからね。 共通の話題は案外たくさんあるのかもしれない。
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