第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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そこには____ 百色華(ひゃくしょくか)の虹色が淡く揺れる真ん中で、ゆっくりとこちらに歩いてくる細身の影が視えた____あれは瀬山さんだ。 瀬山さんは花を踏まないようにしてるのか、時折止まり、よけながらまた歩き出す。 それを視ていた先代は、イライラ気分を隠す気もなく、 『ショウちゃん……! んもう! 走って来いよっ!』 そう言って、弾むように駆け出した。 ”走って来いよ”と言いながら、自分が走って迎えに行くのか。 瞬き3つ。 そんな早さで瀬山さんの傍に行き、2人はなにやら話を始めた。 ここから声は聞こえないけど、瀬山さんは俯いて細い肩を震わせる。 先代は手振り身振りで何かを言って、そして、垂れた頭をクシャクシャに掻きまわすと、ガシッとハグして薄い背中をバシバシ叩いた。 ____ショウちゃん、本当に大丈夫かよ、 ____またコッソリ大泣きするんじゃないのか?  ____(おさ)と話すと決まって後で泣いてたもんな、 ああ……そうだ。 (おさ)のフィールドで先代はこう言ってたっけ。 からかうような顔だったけど、本気で心配してたんだな。 だからああやって、だから走って傍に行ったんだ。 僕達はその様子を静かに視守っていた。 やがて、少し気持ちが落ち着いたのか、瀬山さんは先代と一緒に歩き出し、目の前まで来てくれたんだ。 そして、 『みなさん、私のわがままでお待たせしました。それから……これまでの父の非道、大変申し訳ありませんでした。本当に……本当に……本当は私が滅するのが筋かもしれません。ですが……みなさんに託したい。みなさんに父を滅してもらいたい、…………どうか、どうかお願いします』 目を真っ赤にした瀬山さんは、振り絞るようにそう言うと、深く、深く頭を下げたのだ。
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