第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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最後は____ とても呆気の無いものだった。 あれから結局、(おさ)は最期まで意識を取り戻す事はなかった。 固く目を閉じたまま、時折顔を歪ませ、時折小さく何かを言って、それを幾度も繰り返す。 邪悪な表情(かお)で笑う事も、怒りにまかせ怒声を上げる事も、誰かの魂を喰らおうとする事もなく、頭の蛇も抜け落ちた(おさ)は、皺だらけに枯れ果てた、どこにでもいるただのお爺さんになっていた。 貫く薙刀が(おさ)と地を縫い付けて、僕達はそのまわりを狭く囲んだ。 それぞれの武器を捨てたのは、 『……もう、大きな霊力(ちから)は必要ないようだ、』 (おさ)の様子に中村さんがそう言ったからだ。 武器を使わず霊力(ちから)で滅する、みんなはそれに頷いた。 個々によって霊力(ちから)の色は違うから、(おさ)に向けたたくさんの指先が、赤や青、緑に紫、黄に橙と、まるで小さな百色華(ひゃくしょくか)を思わせて、キレイだなぁなんて……こんな時だというのに、みんなしてため息をついたんだ。 『お前達、準備はいいか?』 こう聞くのも2回目の中村さんは、みんなの顔を順に視た。 『ああ、いいよ』 『今度こそだな』 『いつでもいいぜ』 聞かれたみんなはバラバラとそれに答え、指先に一層の霊力(ちから)を込め、カウントダウンを待っていた。 そして……これも2回目、5から下がって0で滅する。 そのカウントが始まった。
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