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とうとう、この時が来てしまった。
覚悟をしてたはずなのに、いざそう言われると喉が詰まって言葉が出ない。
中村さんと目を合わせ、みんなとも目を合わせ、喋れないならせめて笑おうと思うのに、顔がこわばりそれすら出来ない。
僕はさ、どうしようもないポンコツだ。
ああもう……しっかりしろよ、岡村英海。
最初に約束したじゃないか、僕がみんなを解放するって。
逃げる訳にはいかないよ。
どんなに辛くても、どんなに悲しくても、どんなに心が拒否をしてもだ。
『岡村、大丈夫か?』
困ったような優しい顔の中村さんが、返事をしない僕に問う。
すぐに言葉が出なかった。
それでもなんとか頑張って、わざとらしい咳をしてから無理やり声を出したんだ。
「あ……と、すみません。大丈夫ですよ、」
____嘘です、大丈夫じゃありません、
『そうか、それなら良かった。……岡村、悪いな。辛いかもしれないが、我々はお前に解放してもらいたいんだ。……願掛けではないけれど、そうすれば、岡村の中で生きられる気がしてな』
「僕の中で生きられる……か、……うん、そういう考えもありますよね」
____チガウ、そんなのは気休めだ、
『岡村……ありがとう。最後に出会えたのがお前で良かった』
「僕はなんにも……逆に僕の方が色々教えてもらっちゃった」
____本当は足りない、もっともっと教えてもらいたい、
『いや……そのすまない。霊力はお前の方が上なのに、ついつい出しゃばった真似をした。岡村はこれからも霊媒師を続けるのだろう? 現場で怪我をしたり、悪霊に騙されたり、そんな目に遭わせたくなくてな。それで口煩くなってしまったんだ。許してくれな』
「ううん、ううん、口煩くなんかないよ、すごく嬉しかった、だってさ、教えて貰えるってありがたい事だもの、僕は新人でさ、霊視すら出来なくてさ、……ああ、そうだ霊視、出来るようにならなくちゃ……大丈夫かな、習得出来るかな……うん、あのね中村さん、僕、本当はね、」
____みんなを滅したくないよ、僕は覚えが悪いんだ、だから霊視はみんなが教えてよ、
そう言ってしまいたかった。
バカみたいに泣きながら駄々をこね、どうにかならないのかと喚き散らしたいと思った。
辛うじてそれをしないのは、前に視た【闇の道】があまりにも恐ろしく凄惨だったからだ。
此処で僕が滅さなければ【闇の道】がやってくる。
霊体を焼かれ苦しめられて、そのまま地獄へ流される。
みんなをそんな目に遭わせる訳にはいかないよ。
だから強くならなくちゃ、僕が、僕の手で、滅さなくっちゃいけないんだ。
クソ……頭では嫌になるほど理解してる。
ただ、感情がついてこない。
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