第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

235/267
前へ
/2550ページ
次へ
光る珠の薄明りに照らされて、僕じゃない僕の声……その姿が浮かび上がる。 そこには鏡でよく見る顔があった。 あれは……【僕】だ。 今の僕とおんなじ恰好、お下がりのジャージ上下にTシャツ姿でへたり込む。 どういう事なの……? とりあえず……聞いてみるか、 「…………あのさ、キミは……僕なの?」 ____そうだよ、 【僕】はそう答えた。 目の前の【僕】の口は声に合わせて動いているのに音はしない。 声は頭の中に直接入ってくる。 「…………こんな所でなにしてるの? てかココどこ?」 ____ココ? ココは僕の中(・・・)だよ、 恨めしそうな顔をして【僕】は僕をジッと視ていた。 ”僕の中”って……よくわからないけど、僕のココロの中ってやつなのかな……? 「光る珠がいっぱいあるね、それはなに? もしかして、瀬山さんと僕と大福の霊力(ちから)?」 ____チガウよ、分からないの? これは真珠だよ。前に先代から教えて貰っただろう? 真珠……? 先代……? ああ……そういう事か……耐えきれない程の辛さやストレスに晒された時、希少の子はその辛さを霊力(ちから)で包む。 霊力(ちから)の膜が幾重にも重なって、”辛さ”を保護して丸めて、真珠に似たモノになると言っていた。 それが……あれなんだ。 ____こんなモノが出来るくらい辛いのに、なんでみんなを滅そうとするの? 「…………だって……仕方ないじゃないか。僕が滅さなければ【闇の道】がやってくる。キミだって視ただろう? みんなを……あんなのに(・・・・)乗せる訳にはいかないよ」 ____そうだけど、分かってるけど、でも嫌だ……! みんなで(おさ)を滅したよ、(おさ)はもういない、未来に起こるはずの惨事をみんなが食い止めたんだ! なのにさ、どうしてそこは評価されないの!? 「評価……されるべきだと思うよ。でもさ、過去の被害者達はどう思うかな……? みんなのせいで怪我をした人がたくさんいるんだ。その人達から見れば、みんなはやっぱり悪霊だよ」 言いながら改めて思う。 みんなはさ、僕にとって大切な仲間だ。 だけど被害者からすれば違うんだ。 その罪を【闇の道】は決して許さないだろう。 ____なんだよ……なんでだよ……そんな正論、誰でも言えるよ……!  なんで味方になってあげないの? (おさ)を滅するの、簡単じゃなかったよ、みんな頑張ったじゃない、キミは一緒に戦ってすぐ傍で視てたのに、今のみんなが悪霊じゃないって誰よりも知ってるのに……! 「……うん、そうだね……誰よりも知ってるよ。でも過去は変えられない、」 ____変えられないって……それも知ってる! でもキーマンさんが言ってた、過去は変えられないけど未来は変えられるって! ねぇどうにかならないの?  どうにかしたいよ、どうにかしようよ! 目の前の【僕】は大声を上げると蹲って床を叩き始めた。 バカみたいに泣きながら駄々をこね、どうにかならないのかと喚き散らしている。 僕がさっきしたいと思った事だ。 普段の僕なら絶対にしない事。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加