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僕は【僕】にどう声を掛けたらいいか、それが分からないでいた。
四つん這いで蹲り、床を叩く【僕】の下では、振動なのか光る珠がゆっくりと転がり始める。
白いだけの小さな真珠は、いつの間にか色をつけ、赤や青、緑に紫、黄に橙……まるでみんなの霊力の色みたいだと思ったんだ。
その時だった。
____あぁ……あぁ……!
【僕】がなんとも情けない声を上げた。
そして床に這いつくばると両手をシャカシャカ動かして、転がる真珠を必死になって集めだしたんだ。
____ごめんね、ごめんね、
【僕】は何度も謝りながら、すべての真珠を集めると、その上に覆いかぶさりお腹の下にそれを隠した。
色のついた真珠……たくさんあったな。
あれはみんなだ。
数えてないけど、きっと27個あるはずだ。
「………………」
僕は何にも言えなかった。
だって【僕】は僕だもの。
偉そうに説得しようとしたけどさ、言ってる事は理解出来る。
僕だって同じように思ってる。
____ねぇ、
顔を伏せたまま、【僕】が何かを言いかけた。
「………………なに?」
____頑張ってよ、
「……………………」
____どうにかしてよ、
「……………………」
____キミしか救えない、今しか救えない、……正論なんかクソッタレだ、
「”クソッタレ”って……弥生さんみたいだな、」
____”クソッタレ”って、こういう時に使いたくなるんだって分かったよ、
「うん、」
____とりあえず……ペンダント、
「ペンダント? ……これの事?」
首に下げる小さな塊、マーブル模様の霊力の珠だ。
これがどうしたの?
____みんなをさ、滅したフリしてペンダントに隠せばいい。そうすれば【闇の道】をごまかせる、
「そ、そうかな? ごまかせるとは思えないけど……それに、ずっと閉じ込めてる訳にはいかないよ。それはそれで可哀そうだ」
____もう! キミはおバカなの? 隠してる間に何か手を考えるんだ! そんな事も分からないなんて呆れちゃう!
「え……おバカって……僕はキミだよ?」
____知ってる、僕はキミでキミは僕だ。……お願いだから粘ってよ、足掻いてよ、最初から諦めないでよ。そうじゃないと僕は僕を嫌いになる、
小さな声でそう言うと、【僕】はソロソロと顔を上げた。
お腹の下に27個の真珠を隠して、涙と鼻水でキタナイ顔になりながら。
僕はその場にしゃがみ込み、【僕】に向かって手を伸ばした。
生者とも死者ともチガウ、心の中の【僕】って触れるのかな……?
「……あのさ、ゴメン、……僕は、」
【僕】は僕の顔を視て……笑った……?
あと少し、もう少しで手が____
____届く前、僕の身体にドンッと何かがぶつかった。
それはリアルの方の感触だった。
僕は【僕】に触れる事なく目を開けて、途端視界に入ってきたのは……
『岡村ぁっ!!』
翔君だった。
泣き顔の17才は僕にタックルで抱きついている。
この子も涙と鼻水でグチャグチャなのに、ちっともキタナクなってない。
これが若さというものか。
10代と30代の差を、とくと視せ付けられてしまったよ。
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