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翔君は僕から少し霊体を離し、目と目を合わせた。
そして、
『岡村ぁ……もういいよ、ごめんな、辛かったよな……無理しなくていい、お前は滅さなくていい、俺達は大丈夫だ、山でしばらく待っていたら【闇の道】がやってくる、だから大丈夫だ、…………本当にごめんな。俺達、お前に甘えすぎたんだ、希少の子ってさ、死者と生者と視分けがつかないんだろ? それなのに滅するの、すごく辛いよな。ああ……俺達はバカだ。生者を襲う辛さとか一番分かってるはずなのに……おんなじ事させようとした……ごめん、本当にごめん……』
僕に抱き着きしゃくりあげ、翔君は何度も何度も謝っている。
えっ、あっ、待って、落ち着いて、この子が泣くとすこぶる焦る。
まるで嵐さんが泣いてるみたいで心配になる。
「翔君、大丈夫、大丈夫だから泣き止んでぇ……あぅ……ダメだ、泣き止まないよ……だ、大福ぅ!」
僕が呼べば猫又は(虎の子サイズに戻った)、泣き虫翔をお得な三尾でふさふさふっさーと撫ぜまくる……と、くすぐったいのか『んへへ』なんてほんのちょっぴり笑ってくれた。
よし、いいぞ、この調子で笑わせてーと思っていたら、みんながササッとやってきて、あっという間に囲まれた。
瀬山の手練れは長にはめっぽう強気だったにも関わらず……
『悪かったよ、そんなに辛かったんだな、』
『お前……話の途中だったのに、目ぇ閉じて動きもしないで黙り込んで……』
『そうだよな、俺達は仲間だもんな。仲間を滅するのはキツイよな』
『えぇっとー、岡村君だけに辛い役目を押し付けてゴメンナサイです、はい……』
『なに心配するな。ちょうど【闇の道】に乗ってみたいと思ってたんだ』
『我々の事は我々でケリをつける、気にするな』
しどろもどろで動揺していた。
てか誰だ? さっき聞き捨てならないコトを言ってた霊がいたけもども。
「ちょ、みんな落ち着いて! 僕ダイジョブだから! さっき目を閉じて黙っていたのは自分の世界に入っちゃっただけ! そりゃ辛いけど、滅したくないけど、とりあえず今はダイジョブ! そんな事より誰? さっき”【闇の道】に乗ってみたい”なんて言ってたのは! あんなのに乗りたい霊がいる訳ないでしょうよ! たとえ乗りたいって言っても僕が許しませんよー!」
フンガー!
先代ライクに鼻息荒く、僕は声を大にした。
そんな僕に、半べそながらも笑ってくれる顔を視て、僕の気持ちは固まったんだ。
みんなを滅さない、【闇の道】にも渡さない。
だからと言って他に手立てはないけれど、探せばきっと第三の選択肢が見つかるはずだ。
それまでの間、みんなには悪いけどペンダントの中にいてもらう。
中に閉じ込め外部と遮断。
【闇の道】から隠し通してみせるから。
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