第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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僕もみんなも、先代も瀬山さんも。 誰もかれもが口を閉ざして下を向いていた。 どうして良いか分からない。 みんなを滅さない、そう決めたのに本人達が拒否をする。 僕も僕で、”昔の悪事を視てないから”と言われてしまって、強く反論出来ずにいた。 気まずい沈黙が流れる中、僕は何の気なしに空を見た。 ずっと下を向いていたから、首も痛くなりつつあったし深い意味は何もない。 相変わらずの曇り空だ、僕の今の心みたい……なんて。 どんより気分を紛らすように、しばらく空を眺めていると、高い位置で赤いなにかがキラッと光った。 今の光はなんだろう……? 飛行機、とかかな……? あれ? こんな事、前にもあった気がするぞ。 なんだっけ、いつだっけ……(ここ)に来てから何もかもが濃すぎるからさ、ここ何日かの記憶が曖昧だ。 でもデジャヴ、絶対あったよこんな場面。 んーんー……………………、んー……あっ! お弁当の時だ! 電柱に放電しながら地道に先代達を追ってた途中。 車が数台停められるスペースで、僕と大福はランチをとった。 その時、空のうんと高い場所で何かが一瞬光ったの。 色は赤でさっきと同じ。 それって偶然かな、なんだろな、……と、1人でモヤモヤ考えてると、空ではもう一度赤い光が輝いたんだ。 今度は一瞬じゃない、二瞬三瞬、いやもっと。 なんだアレ。 ポカンと口を開けたまま空の光を眺めていると、みんなもアレに気付いたみたいで揃って上を向き出した。 えっと……火球? 不思議な光は徐々に高度を下げてきて、姿がハッキリ視えだした。 それは火の玉に似たもので、炎の尻尾を後ろに伸ばし速度を持って降りてくる。 同時、地に咲く数多の百色華(ひゃくしょくか)が赤く染まった。 圧巻の赤い海、揺れる花はさざ波を思わせる。 「みんな、先代、瀬山さん、アレなんだろ」 誰でもいい、知ってる(ひと)は教えてください……と、声をかけた時だった。 とうとう火球は地面に墜落。 ドーン! とそこそこな音を立て、土煙が舞い上がる。 ザンッ!! あ、と思ったすぐ後、僕の視界は男達の背中でいっぱいになった。 『岡村、下がってろ』 野太い声が僕を後ろに押し下げた。 そう、みんなは僕を守ろうとしてくれたんだ。 直後。 中村さんが印を結んで、大きな剣を秒で構築。 二刀流をクロスに構えて左右に振り切る、その剣圧は同じく秒で砂塵を払った。 …… ………… 霧が晴れるように、茶色いベールが消えていく。 砂塵の代わりにそこに見たのは火球……ではなく、ヒトだった。
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