第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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こんな所に……人? 火球の墜落直後に突如現れた人物。 生者なの? 死者なの? 一般人? それとも霊力者? ……正体がわからない。 まずは観察してみるか、と。 ザワつくみんなの隙間から、目測10メートルの先を視た。 そこに立ってる後ろ姿の謎の人。 筋肉質で身体が大きい、けど……女性……か? まず目についたのは髪の毛だ。 腰……いやオシリまであるだろうか。 長い髪は真っすぐで、そのまま下に垂らしてる。 特に変わった髪型ではない……が、色が凄かった。 その髪色は赤だった。 赤毛といっても茶色じゃない、本当に赤なのだ。 炎のような、血のような、熟した艶のリンゴのような。 染めてるのかな……あの色……V系バンド方面の方……かな……? それにしては服が違う、V系じゃない、カジュアル系だ(そもそもV系さんがココにくるとは思えないけど)。 シンプルな深い緑のカーゴパンツ、同じ色のベルトを締めて、その上は……な゛ーーーーーーっ!  ちょうどその時、彼女は肩をグルグル動かしながら僕らの方を向いたんだ。 や! ちょ! なにあれーっ! 彼女はハイネックのタンクトップを着ていた。 黒色の、身体にフィットしすぎな1枚。 何を着たって個人の自由、タンクトップでも良いけどさ。 でもアレは駄目だ……何が駄目だって、それはその……アレだよ。 タンクトップの前面胸元、そこに大きな穴が開いていた。 破けてるのとは違うみたいで穴はキレイなハート型。 きっとデザインなのだろう。 でもさ、それにより胸元が見えて……見えて……めちゃくちゃ見えて、胸の谷m、ア゛ーーーーッ! (実物前だと口にするのも恥ずかしい) ちょっとぉぉぉぉ!  谷は見せちゃ駄目でしょぉぉぉぉぉ!! 目のやり場に困る、すこぶる困る。 あの服を着てるのが男性なら良いんだ、でも女性じゃない! なんで? なんだってそんなん着るの? 照れたりしないの? てか服屋さんでそれ見て「おっ! これいいじゃん!」ってなったの?(ま、なったから買ったんだろうけど) もう無理。 僕は”草が主食のレンアイチキン”、自慢じゃないが女性に対して免疫が薄い。 ホント無理、顔とかまともに見られない。 かと言って胸元はもっと無理。 その辺を避けながら、見れるトコだけ見てみると……腕、スゴイな。 剥き出しの二の腕は遠目であっても、硬そうな筋肉が見てとれた。 肩から腕にかけてゴツゴツのガチガチで、僕よりぜんぜん逞しい。 てかそれよりも。 あの人って死者かな、生者かな。 僕の目には両方同じに映るから、パッと視だけじゃわからない。(そもそもまともに見れない、カーゴパンツはなんとか見れる) 一般の生者の方が(ここ)に来るとは思えないけど、霊媒師なら分からない。 (おさ)の噂を聞きつけて、滅しに来た生者かもしれないのだ。 みんなの後ろから。 僕は両手を湾曲させて、霊力(ちから)を溜めて前を視た。 距離はあるけど今の僕なら余裕で届く。 えいや! 霊矢とは違う、単純な霊力(ちから)の線は女性に向かって飛び伸びた。 『イッテ!!』 わっ! 喋った! 僕の電気は女性の腕にグサッと刺さると、赤い線が2人の間を繋ぎ結ぶ。 と……いうコトは、彼女は死者だ、そか、死者か。 分かった所で電気の線を切り離そうとした時だった。 筋骨隆々V系さんが(名前も正体もわからないからとりあえず仮名)、二の腕から電気の線を乱暴に引き抜いた……って、えぇ!? 今まで何度も放電したけど、このパターンは初めてだ! V系さんは”チッ!”と舌打ち、 『(いて)えじゃねぇか! にーちゃん! アンタ、アタシに喧嘩売ってるのか? いいぜ、買ってやるよ!』 と怒声を上げた。
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