第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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V系さんは眉間にシワをめり込ませ、ボキボキ指を鳴らしながらドカドカ歩いてやってくる。 そして僕を隠すみんなに向かって大声を張った。 『お前らそこどけ! アタシはそこのにーちゃんに用があるんだ! 小僧のクセして喧嘩を売るとは大した度胸! 度胸に免じて祈る時間をくれてやる! さぁ祈れ! 祈った後にボコってやるから!』 えぇぇぇぇ! ”祈れ”って! それって映画でよく聞くセリフ! そう言われた悪役は、そのあとガチでボコられるんだ! 「あのっ! その待って! 悪気とかぜんぜんないし! 喧嘩を売ったつもりもないし!」 しどろもどろで弁解したけど、V系さんは止まらない。 みんなはガードを固くして僕を守る気満々だ。 ごめ、みんな、ほんと、ごめん!  『なんだお前ら、そこのにーちゃん庇うのか? だったらまとめてボコってやるよ!』 とうとう傍に来ちゃったV系さんは、そう言って凄みをきかす。 てかなんだこの(ひと)、めちゃくちゃ短気だ。 や、そりゃあ僕が悪いけど、それにしたって短気すぎ! とそこに、僕らのポニテのいぶし銀、中村さんが前に出た。 『待ってくれ、今のは確かにこちらが悪い。だが許してやってくれないか? うちの岡村は霊力者だが目が特殊なんだ。目視だけでは生者と死者の区別がつかん。霊力(ちから)を放ち、岡村と繋がれば死者、繋がらなければ生者。視分ける為には毎回これをしないと駄目なんだ』 そう言われたV系さんは、 『あ、そういやそんな話を聞いたような、』 え、誰に?  頭に疑問が浮かんだけれど、中村さんのナイスな取り成しのおかげをもってV系さんはヒートダウン。 こ、これは謝罪のチャンスだ! 「あの! すみませんでした。さっきの放電、うちの中村さんが言った通りなんです。僕は霊媒師だけど新人で、生者と死者の視分けがつかない。それで毎回放電するんです。あなたがどっちなのか知りたかった。だけどすみません、腕、痛かったですよね」 みんなの背中をすり抜けて、V系さんの前に出て、顔はまともに視れないけども、すみませんと頭を下げた。 正体不明のガラの悪い女性だけども、不思議な事に嫌な感じはしなかった。 それどころか……信じがたい事だけど、ヘンテコな親近感さえ湧き上がる。 だからだろうか、僕は素直に謝れたんだ。 とはいえ相当怒ってる。 きっと1度の謝罪じゃ許してくれないだろうと思っていたのに、その予想は裏切られた。 V系さんはガハハと笑い、 『お、ちゃんと謝るのか。わかった、許す!』 とアッサリ許してくれた。 え、いいの? あんなに怒っていたじゃない。 許してくれて嬉しいけれど……なんだろ、すっごく調子が狂っちゃう。
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