第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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さっきまでの重たい空気がかき混ぜられて、僕もみんなも呆気にとられて彼女を視てた。 注目を浴びているにも関わらず、気にもしないV系さんは突如大声を出したんだ。 『あっ! いたいた、ジョージ! モッチー!』 えっ!? 思わずみんなで顔を見合わす。 ジョージ? モッチー? 誰の事? ……って、消去法で言ったらもう、 『トモちゃん!』 『トモさん、』 答えたのはレジェンド2人、先代と瀬山さんだった。 当然僕らは戸惑った。 すこぶるザワつき、V系……いや、トモさん?(2人がそう呼んでいた) と、先代達をガン視する。 3人は知り合いなのか、近付くと仲良さそうに話を始めた。 『そろそろ呼ぼうと思ってたの。ちょうど良かった』 と、ニコニコ笑うは先代で、おそらく”モッチー”の方。 たぶん苗字が”持丸”だからと予想した。 『いきなり喧嘩しそうになるんだもの、ドキドキしました』 と、優しく笑うは瀬山さん、……なんだけど、なんで”ジョージ”?  まさかと思うが名前が”彰司”だからかな? それを文字ったとか言っちゃう?(多分言うんだろうな) 『あははは、悪かったよ。でもさ、いきなり腕刺されたんだぜ? そら頭に血ものぼるだろ!』 と、豪快に笑うはトモさん、てか誰?(疑問数度目) 先代達とどういう関係? 頭に疑問符が飛びまくる中、そこにさらならる燃料が投下された。 『うなぁん♪』 僕の愛しのスィートエンジェル、大福姫がカーゴパンツに霊体(からだ)をすり寄せ目をパチパチ、そう、親愛を示しているのだ!(猫の瞬きは”オマエ好き”の意味で……ry) えぇ!? なんで!? 姫のオトモダチなの!? ど、どういう事? トモさんの正体は? 僕はとうとう我慢の限界、3人と1ニャンの間に割って入った。 「あ、あの! 先代、瀬山さん、こちらの方は……?」 乱入と同時に質問してみた。 僕の後ろでみんなも答えを待っている。 『紹介がまだでしたね、この子は、』と先代が言いかけて、これで疑問も解消だ、なんて思っていたら、先にトモさんが話し出したんだ。 『あー悪い悪い。アタシ、アンタらの邪魔したな。深刻そうに話してたのに悪かった。もう邪魔しないから続き話してよ。えーっと、なんだっけ? 滅する滅さないだっけか。アタシ、(うえ)でずっと視てたんだ、』 ここまでは軽いノリだった。 悪いだなんて思ってないよね? な半笑い。 だけどこの後、声のトーンが一段下がり…… 『そこの茶髪のにーちゃん以外、他は全員悪霊だろう?  なぁ、アンタら今まで何人の生者を襲った? ____なあんてな、本当は全部知ってるよ。酷いねぇ、随分な数だ。怪我人が山になって積み上がる、まるで被害者のバーゲンセールだ』 半笑いは変わらない、が、トモさんの目が射るように鋭くなった。 再び空気が変わる。 さっき僕に怒鳴っていたけど、そんなのが比べ物にならないくらい____ 場は凍り、そして張り詰めた。
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