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重い沈黙が流れる。
先代も瀬山さんも黙ったままで、ただジッと僕らを視ていた。
みんなは霊体を強張らせ、唇を噛む者、目をギュッと瞑る者、爪が喰い込む程拳を握る者……それぞれだったが、辛さと後悔、あとはこれでもかと自分を責める悲痛が伝わった。
僕は……僕はさ、なんだかすごく腹が立ったんだ。
トモさんは空で視てたって言ってたよね?
どこからどこまで視ていたのか知らないけど、それでも、視てたんでしょう?
それなのにそんな言い方ないじゃない。
生者を襲ったこの霊達は、襲った分だけ苦しんだ。
今だって苦しんで、だからこそ、救われようとしないんだ。
…………クソッ!
先代、瀬山さん、大福、トモさんとは友達なんだよね?
なのにごめんなさい。
僕はこれからみんなの友達に生意気を言います。
「ちょっと良いですか?」
思い切って話しかけた。
緊張するな、手のひらに汗が滲む、でも強張るみんなをそのままにしたくない。
『あぁ? なんだよ』
返事をしたトモさんは、目から力をフッと抜くと真面目な顔を僕に向けた。
話、聞いてくれるみたいだ。
「あの……僕らの事、空から視てたって言ってましたよね? もしかして全部は視てないですか? さっきの間違ってます。みんなは”悪霊”じゃない、”元悪霊”です」
トモさんって背も高いんだな、僕を余裕で視下ろしてる。
迫力、ハンパないや。
でも大丈夫、おくりびの面子でそういうのには慣れてるからね。
後ろからはいぶし銀の慌てた声、『岡村、良いんだ、本当の事だ』とかなんとか言ってるけども、軽く手を上げお黙り頂く。
「確かにみんなは生者を襲いました。そのせいで怪我人も沢山出た、でもね、長は『生者を殺せ』と命じたんです。だけど1人も殺さなかった。本当に悪霊なら迷わず殺したはずだ。でもそうしなかったのは、良心と、霊媒師としての誇りがあったからです」
ふうん、微かに頷くトモさんは、僕とみんなを順に視た。
だけどなにも言ってこない。
僕はかまわず話を続ける。
「被害者からすれば、そんなのは言い訳だと言われるかもしれない。だけどみんなは脅されてた。長は霊力の強い悪霊で、逆らえば魂を喰われ、毒の実験台にされ、命令に背けば家族を殺すと人質に取られ……そんな状態が何年何十年と続き、強い恐怖に支配されたんだ。誰も助けに来ない絶望の中、発狂したっておかしくない。それでもみんなは生者を殺さず、歯を食いしばって耐えてきた。そして今日、みんなは長を滅して未来の惨事を食い止めたんだ。だから……”悪霊”なんかじゃない、”元悪霊”です」
思わず力が入る。
僕は自分でも驚くような大声を出していたんだ。
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