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『百色華はさ、時間で色を変えるだろ? その色は霊の幸せな気持ち、優しい気持ち、感謝の気持ち、そういったものを分けてもらって色をつけるんだ。善の心が傍にあればいつまでだって綺麗に咲く。だが反対に、悪の心が近寄れば、たちまち花は枯れてしまう。色を失くしドロドロに溶けてしまうんだ。だが視ろ!』
バッと両手を広げたトモさん。
その手の先には果てまで広がる百色華。
どの花も虹色で良い香りをさせている。
僕は……僕はさ、その綺麗な花を視てたら、どうしようもなく泣けてきたんだ。
やっぱりそうだ、今のみんなに悪い気持ちは微塵もない。
優しくて、強くて、その分過去を悔いているんだ。
『百色華、いつまでたっても綺麗なままだ。アタシがアイツら煽った時も、一輪だって枯れなかった。コレ視ちゃったらな、悪霊なんて言えねぇや。ほら、にーちゃんもう泣くな。それとアンタらさ、』
泣いてる僕の背中を叩き(って、凄い力が強いんだけど……うん、まぁいいや)、みんなに向かってこう言ったんだ。
『アンタらさ、不本意だったよな。だけど生者を襲った過去は消えない。罪は罪だ』
圧はない、でもやっぱり、そう言われてしまうのか。
救いたい、滅したくない、そう思うのは僕だけなのか。
『分かっています。充分だ。岡村だけじゃない、彰司さんにも、持丸にも分かってもらえた。それからお嬢さんにも。罪を償おうと思ってます。我々は此処で【闇の道】を待ちます』
中村さんはそれだけ言うと頭を下げた。
後ろのみんなもそれにならう。
やだ……やだよ、僕はまだ教えてほしい事がいっぱいあるんだ。
霊視もそれから口寄せだって出来ないの。
だから消えるなんて言わないで。
『ふぅん、そっか。やっぱり消えるつもりなんだな。でもさ【闇の道】っていつくるか分からないぞ? それまでココでボケッと待つのか?』
ボケっとって……トモさん、良い人っぽいんだけど、今一つデリカシーに欠けるんだよな。
でもなんか憎めないけど。
『はい、此処で待つつもりです』
『あ、そう。ふぅん、ふぅん。………………』
トモさん?
どうしたんだろ、トモさんは何か言いたげに、何かイラっとした感じに、腕を組み、中村さんをジッと視る。
『あ、あの……なにか?』
ははーん、中村さんも胸元が気になるみたいで、目を逸らししどろもどろになっている(ナカーマ!)。
で、おそらくだ、オトコの純情を理解しないトモさんは、顔を背けた中村さんにガチギレした。
『あーーーーーーっ! もうイライラすんな! アンタが一番年上? アンタが責任者? だったらシッカリしろよ! さっきから滅される滅されるってそればっかだな! それより先にやる事あんだろ!』
『や、やる事ですか……?』
え、ちょ、わからない、なに? なに?
やる事ってなに?
そのキレっぷり、そのまま中村さんを滅するんじゃないかといった勢いで、叫ぶように言ったんだ。
『ああそうだよ! アンタはガキの頃、母ちゃんに教わらなかったのか? ”悪い事をしたらちゃんと謝れ”ってよ! アタシは息子に口が酸っぱくなるほど言い聞かせたわ! 消えるんでも何でもいい、好きにしろ! だけどな、その前に被害者達に謝りに行け!』
あ……ごもっともです。
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