第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『ったく、コレだから素人は、』 とかなんとかブツブツ言ってるトモさんに、先代達は肩を震わせ笑ってる。 慣れたもんだな、この(ひと)、いつもこんな感じなの?  てか何を持って”素人”なのか。 手ぶり身振りのオーバーアクション、迫力があって、口が悪くて、それでいて言ってる事は割と正しい(てか、霊媒師になってから高確率で口の悪いヒトに出会うよ)。 そういや息子さんがいると言ってたな。 どんなヒトだろ……あ、いや、きっとこんなヒト(・・・・・)なんだろな。 『とにかくな、謝りに行け。一人一人直接謝罪に行くんだよ。アンタらなら視付けられんだろ? なんたって揃いも揃って霊媒師だ。霊視で探し出せばいい。まさか、”霊視が出来ませーん”なんて言い出さないだろうな。ミエミエな嘘はつくなよ? 霊視が出来ない霊媒師がいたらツラを拝みたいわ』 あぅ……ちょ、みんな、そんな顔で僕を視ないで、チラチラ視るとかもヤメテ、どうせなら突っ込んで、笑い飛ばしてくれぇ、……ぐは。 みんなはザワついていた。 衝撃を受けた顔で(ガガーン!的な)一斉に喋り出す。 『た、確かに! 悪い事をしたら謝るべきだ』 『当たり前の事なのにな、まったく頭に浮かばなかった』 『えぇっとー、森木もです、はい。思いつきませんでした』 『だけどさ、俺達幽霊だし大丈夫かな。視えないんじゃないのか?』 『それは心配ない。相手に霊力(ちから)がなければ”非常用チャンネル”を使えばいい。要は夢枕に立つんだ』 『被害者……何人くらいいるだろう。全員をまわったら数年単位でかかるかもしれん』 『だがお嬢さんの言う通りだ、謝りに行くか、』 『そうだな。ならば計画を立てよう。なんてったって数が多い。闇雲じゃあ駄目だ』 あ……みんなの表情が変わった。 目的が出来たというか、悲痛なだけの暗い瞳に力が宿り始めてる。 いいなぁ、こういう雰囲気、嬉しいなぁ。 トモさん、まさかこうなる事を予想してたのかな……? 「トモさん、……あの、ありがとうございます」 僕が言うのも変かもだけど、お礼を言わずにはいられなかった。 トモさんは『んー?』と僕に振り返る。 『なにがアリガトなんだ? アタシは何にもしてねぇよ。悪い事をしたらキチンと謝れ、当たり前の事を言っただけだわ。にーちゃんもそう言われて育っただろう?』 「はい、言われました。母だけじゃなく父にも。そういえばトモさんには息子さんがいらっしゃるんですか?」 みんなは丸く輪になって謝罪計画を立て始めた。 その間、チャンスとばかりの質問タイム(3ターン目)。 『ああいるよ。これがまたクソ可愛いんだ』 「あはは、クソ可愛いって。なんだか愛情を感じるなぁ。息子さんはおいくつですか? ご健在です?」 聞いて良かったかな、言った後で少しドキドキ。 トモさんって視た目は若くて20代の前半だ。 でも死者の容姿は実年齢と直結しない。 実はすっごいお年を召されて、息子さんもこの世の人じゃないかもしれない。 なのにこんな聞き方、悪かったかな?
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