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僕の密かな心配は杞憂に終わった。
『ははっ! チョーご健在だよ。仕事も真面目にやってるし、風邪一つ引かない健康体だ。年は、……あれ? 年はいくつになったんだ? アタシの中では二十歳でとまっちゃってるから……んーんー、とりあえずイイ大人だよ! それよりな、……ふふふ、アイツ最近結婚したんだ。相手の子がまたスッゲー良い子でさぁ! もー最高にハッピー! なんも言う事ねぇや!』
ぱぁ!
トモさんが満面の笑みを浮かべた時、咲き乱れる百色華がぶわんと一気に赤く染まった。
すごいっ、嬉しい気持ちがリアルタイムで反応してる!
「それはおめでとうございます。良かったですねぇ」
『うん、すっっっっげーーーーー嬉しいよ! 本当はさ、アタシもお嫁さんに挨拶したかったんだけど……そうもいかないだろ? だからコッソリ陰から視てた。いつか黄泉で会えるから、その時の楽しみにしようと思ってな』
そっか……という事は息子さんやお嫁さんに霊感はないのかな。
それなら非常用チャンネル、夢枕に立てば良いのに……と思ったけれど、そこまで言うのはお節介かと、前を視たまま頷いた。
『んー? んー。あのさ、さっきから気になってたんだけど、何でにーちゃんはアタシを視ないの? 下視てるか首元視てるかだよなぁ。なんかヘンじゃねぇか?』
「え゛っ!?」
いきなりそんな質問が来ようとは思ってもみなかった。
当然のあばばばば、当然の挙動不審、理由はあるけど言いにくい。
恥ずかしいから出来る事なら言いたくない。
「そ、そんなコトないですよ。気のせいじゃないですか?」
曖昧に笑いつつ煙に巻こうとしたけれど、トモさんは口を尖らせ食い下がる。
『その態度、怪しいな。もしかして、隠し事でもあるんじゃないのか? やましいコトがあるから視れないんだろう。それ、もしかしてアイツらに関係する事か? もしそうなら全部言え、隠すと痛い目に遭うぞ』
声に凄みが加わった。
痛い目って物騒だ、てか飛びすぎ、話をややこしくしないでー!
「やっ! 違いますって! みんなはまったく関係ない、完全に僕自身の問題でして、その、あの、やっぱ言わなきゃダメ?」
圧がすごい、迫力で詰め寄られ、僕は泣く泣く理由を話した。
すると、
『はぁ? そんなコト? 原因はパイオツか。マジか、にーちゃん、純情じゃねぇか』
理由を知ってカラカラ笑うトモさんは、バシィッと僕の背中を叩いた(2回目キターーーー! 力強ーーーー!)。
「ちょっと! そんな、パ、パ、パ、パ、……! ダメだ……これ以上言えないよ。と、とにかく! なんか上着を着てください! てかそのタンクトップ! どこでそんなの売ってるの。もしかして黄泉? 黄泉の国なの?」
気恥ずかしくって話を逸らそうと試みる。
その服どこで買ったのー? コレ、女子の話の定番!(と思ってる)
トモさんは定番話に答えてくれた……のだが、その答えはトモさんの正体へと繋がっていたんだ。
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