第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『これはタンクトップじゃねぇよ、生きていた頃に着てたコスチュームだ。そか、カーゴ履いてるから分からなかったか』 「え? コスチューム?」 『そ、コスチューム。コレ下まで繋がってるんだよ。ああ、ほら、水着みたいに。なんならさ、カーゴ脱いで視せてやろうか?』 トモさんは目を細めてそう言ったけど、これ絶対ワザとだ! 僕をからかってるんだ! うろたえないぞ、スマートに返してやる! と思ったけど、やっぱりちょっとうろたえた。 「おっふ! いい! 脱がなくていい! ダイジョブだから! そのまま履いてて! てかなんのコスチュームなの? 生前はコスプレイヤー?」 『ちげぇわ。これ着て戦ってたんだよ。で、にーちゃんがイヤがる胸の穴はデザインでもあるけど、アタシにとって必要なモノでさ。ほら視てみろ、ココに……って、後ろを向くなー! コッチ向けー! ったく、これだから素人は。ほら視ろ、ちょうど良いんだ。パイオツの谷間にピッタリ隠れる。ココにコレを隠し持ってだな、』 首根っこを掴まれて、強制的に胸元を視せられる。 そこには豊かな脂肪に半分埋もれた栓抜きがあった。 「………………コレって」 『あぁ? なんだ真面目か? オカタイコトは言うなよ? 本当は反則だけどな、アタシは良いんだ! ヒールだから許される!』 ヒール……? ヒール……って、ハイヒールじゃあなさそうだ。 じゃあなんのヒール? 一般的にヒールの意味は”踵”だけど、”悪役”という意味も持っている。 トモさん、生前はコスチュームを着て戦ってたと言っていたな。 どこで? どこって……うん、おそらくリングだ。 ハートに開いた胸元に栓抜きを隠し持つ。 その栓抜きは反則だけどヒールだから許される。 ああもう待って、それって、もしかして、でも、だけど____ 僕は勇気を出してトモさんの顔を視た。 まともに、正面から、まじまじと。 キレイな人だ。 赤い髪、グレイのアイシャドウ、ワインな口紅。 すっごく派手だ。 だけどこの顔____彫りの深い大きな目はそっくりじゃないか。 霊体(からだ)もそう。 180センチはありそうな高身長、唸る筋肉、恵まれた体躯は色濃い血の繋がりを感じざるを得ない。 062f5a4d-0416-4f7b-ba84-56c5c251c784
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