2366人が本棚に入れています
本棚に追加
『これはタンクトップじゃねぇよ、生きていた頃に着てたコスチュームだ。そか、カーゴ履いてるから分からなかったか』
「え? コスチューム?」
『そ、コスチューム。コレ下まで繋がってるんだよ。ああ、ほら、水着みたいに。なんならさ、カーゴ脱いで視せてやろうか?』
トモさんは目を細めてそう言ったけど、これ絶対ワザとだ!
僕をからかってるんだ!
うろたえないぞ、スマートに返してやる! と思ったけど、やっぱりちょっとうろたえた。
「おっふ! いい! 脱がなくていい! ダイジョブだから! そのまま履いてて! てかなんのコスチュームなの? 生前はコスプレイヤー?」
『ちげぇわ。これ着て戦ってたんだよ。で、にーちゃんがイヤがる胸の穴はデザインでもあるけど、アタシにとって必要なモノでさ。ほら視てみろ、ココに……って、後ろを向くなー! コッチ向けー! ったく、これだから素人は。ほら視ろ、ちょうど良いんだ。パイオツの谷間にピッタリ隠れる。ココにコレを隠し持ってだな、』
首根っこを掴まれて、強制的に胸元を視せられる。
そこには豊かな脂肪に半分埋もれた栓抜きがあった。
「………………コレって」
『あぁ? なんだ真面目か? オカタイコトは言うなよ? 本当は反則だけどな、アタシは良いんだ! ヒールだから許される!』
ヒール……?
ヒール……って、ハイヒールじゃあなさそうだ。
じゃあなんのヒール?
一般的にヒールの意味は”踵”だけど、”悪役”という意味も持っている。
トモさん、生前はコスチュームを着て戦ってたと言っていたな。
どこで?
どこって……うん、おそらくリングだ。
ハートに開いた胸元に栓抜きを隠し持つ。
その栓抜きは反則だけどヒールだから許される。
ああもう待って、それって、もしかして、でも、だけど____
僕は勇気を出してトモさんの顔を視た。
まともに、正面から、まじまじと。
キレイな人だ。
赤い髪、グレイのアイシャドウ、ワインな口紅。
すっごく派手だ。
だけどこの顔____彫りの深い大きな目はそっくりじゃないか。
霊体もそう。
180センチはありそうな高身長、唸る筋肉、恵まれた体躯は色濃い血の繋がりを感じざるを得ない。
![062f5a4d-0416-4f7b-ba84-56c5c251c784](https://img.estar.jp/public/user_upload/062f5a4d-0416-4f7b-ba84-56c5c251c784.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!