第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「んもー、最初から言ってくれたら良かったのに」 僕がブーブー文句を言うと先代は、 『私は言おうとしたんだよ。なのにトモちゃんがさー、イタズラだからさー』 同じくブーブー文句を言った。 瀬山さんはニコニコ笑って、 『まあまあ、トモさんは驚かせたかったんですよ。岡村さん、やっぱり驚いた?』 とワクテカ顔だ。 「そりゃあ驚きましたよ。だってさ、前に聞いた話だと朋さん生まれ変わったって。だからいないと思ってたんだ」 前に社長と先代からそう聞いた。 社長が3才の頃、交通事故で命を失くした朋さんは、そのまま17年間現世にとどまった。 幼い我が子を残したまんま黄泉の国へは逝けなくて、社長が二十歳(はたち)になるまで一緒にいたんだ。 その後、先代に光る道を呼んでもらって黄泉の国へと旅立った早々に生まれ変わったのだと。 『ははっ! (わり)い、そりゃウソだ!』 ガハハと笑って頭を掻いて、悪びれない朋さんが言う。 僕は半分呆れ、半分疑問に思いながら聞いてみた。 「ウソ? なんだってそんなウソつくの? 大和さん、朋さんに会いたかったと思いますよ? 社長は口寄せ出来るんだし、普通に会えば良かったのに」 『んー、それな。だって大和はさぁ、すっげぇイイ男だろ?』 朋さんは照れながら僕の腹を撫でまわす。 や、ちょ、ヤメテ。 いくら僕が大和さんTシャツを着てるからって、くすぐったいからマジヤメテ。 『アタシがまだいるって知ったらさ、大和のヤロー絶対再婚しないじゃん。イイ男だし、まだ当時若かったし、大和の邪魔をしたくなかったんだ』 「朋さん……そんなに大和さんの事を……」 『大好き! アタシにとってパーフェクトな男だ。強くて優しい、おまけにツラも良い。アタシと誠を心から愛してくれる。だからこそ、アタシがいなくなっても泣かないで幸せになってもらいたかった。なのに……あんにゃろー、再婚はしねぇは、つかその前にカノジョも作らねぇわ……ったくなぁ。しようがねぇ野郎だ』 朋さんは怒った口調とは裏腹に、眉をハの字に笑ってみせた。 呆れ半分、嬉しさもきっと半分だ。 『大和とは、此処、W県で初めて会ったんだよ。お互いまだデビューしたてでさ、まともな試合なんか出れなかった。ギャラも安くて、あん時は格闘技じゃなくショーみたいな試合に出させられたんだ。男女でタッグを組んで2対2の混合試合。その時に組んだのが大和だ』
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