第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『____で、あるからして、仕事を分担するんだ。霊視班は被害者を視付け現在の住所を特定。もし亡くなられてたら代わりに墓を特定。それを元にルート班が回る順番を決める。情報収集班は当時の状況、その後の経緯を改めて調べ上げて全員で共有。ここまで準備が整ったら、あとは……心からの謝罪をしに一人一人訪ねていく、』 大きなホワイトボードにはギッシリと文字が書き込まれていた。 霊媒師ってこういう時便利だなと思ったのは、プレゼン中、文字を指すレーザーポインターの代わりに、指から霊力(ちから)を放出させていた事だ。 中村さんの固定カラーは深い緑。 目に優しい葉っぱの色が左右上下と忙しく動き回っていた。 僕、先代、瀬山さん、朋さん、大福(猫は飽きちゃったのか、丸くなって眠ってる)は、その説明を横並びに聞いていた。 中村さんが何かを言うたび、先代と瀬山さんは『いいぞ!』『バッチリ!』『もう悪霊じゃないね!』など、ポジティブな合いの手を入れ、一緒に座る朋さんをチラチラ視ていた。 長いプレゼンが一通り終わり……瀬山の霊媒師軍団は、肩をすぼめてこう聞いた。 『ど、どうかな? これなら最小限の時間で行けると思うんだ。最小限と言っても早く終わらせたいとかではない。昔の被害者は急がないと寿命を終えてしまうかもしれないだろう? だからだ。まだハッキリ分からないが……試算では2年もあれば回り切るはずだ』 計画に物申す、そんな意見が出るかもと、みんなは緊張した顔で立っていた。 聞いてて僕は良い計画だと思ったし、先代達はベタ褒めだ。 だがただ1人、朋さんだけは渋い顔で唸っていた。 『お、お嬢さん、なにか意見があるようだが……遠慮なく言ってくれないか? まだこれは仮の計画だ。穴があればどんどん修正したい』 まるで上司の決裁を待つ部下のような中村さんは、額に汗を浮かべてる。 上司コト朋さんは『じゃあ言わせてもらうかな、』とおもむろに立ち上がった。 『計画は……まぁ、良いと思うよ。無駄がないし効率も良さそうだ。だが期間は長いな。2年? 甘い、1年で終わらせろ。なに一切の休憩を入れなければそれも可能だろう』 キ、キビシーーーーー!  いくら幽霊は疲労を感じにくいと言っても、現世にオートリカバーはない。 なのに休憩無しと言うのか。 この(ひと)さすがだわ、さすがヒールだわ。 『次の問題点だが、被害者が寿命を迎えていた時、アンタらは代わりに墓に行くと言ってたな。墓に行ってどーする、そこには誰もいないぜ? 霊媒師が聞いて呆れる。方法はあるだろ。被害者を口寄せするなり、もしくは____直接黄泉まで謝りに逝くとかよ』 ザワ……ッ 朋さんのご提案。 ”直接黄泉まで” という最後の一言にみんなは動揺を隠せない。 互いが互いの顔を視て、小さな声で何かを言ってる。 その声は良く聞こえないけど、ワカルよ。 僕もちょっと動揺してる。
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