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『お嬢さん……その、なんだ。それは出来ないよ。我々は悪霊で、黄泉の国へは逝けない。直接謝りには逝けないんだ。だがそうだな、現世で口寄せすればいいのか。考えが抜けていた。そうさせてもらうよ。お前達、早速修正箇所が出来たぞ!』
気を取り直した中村さんは、みんなに計画の修正の指示を出した。
朋さんは不機嫌そうな顔をして、その様子を視ていたのだが……
『指摘箇所はまだまだあるけどさ。その前に質問。アンタら、謝罪が終わったらどーすんの?』
腕を組み圧を散らす。
そんな朋さんにみんなは力の入らない笑顔を向けた。
『どうするもこうするも、謝罪が終われば消えるだけだ。お嬢さんに言われて気が付いた。悪い事をしたら謝る、当然だ。どんなに責められてもどんなに辛くても、それだけの罪を犯したのだから。本当は……言われる前に気付くべきだったのだがね。まったく……お恥ずかしい限り、』
情けない顔をして、ポニテに手をやる中村さん。
みんなも恥ずかしそうに顔を下げた。
『ふぅん。黄泉で謝るか口寄せするかは一旦横に置いといて。ま、謝罪に行けば相当責められるだろうなぁ。でも仕方がない。責められてこい。それが被害者にとって救いにもなるかもしれないからな。被害者はさ、降って湧いた災難に怒りの持っていき場がなかったんだ。中には霊が視える人もいたみたいだけど、大半は、原因不明の事故に巻き込まれたと思ってる。原因は俺らにある、俺らを思いっ切り責めてくれと、アンタらが行けば、傷付く半面、怒りと悲しみをぶつける場所が出来るんだ。少しは気が晴れるかもしれない』
朋さんは淡々と言う、みんなは更に肩を落とす。
それでも、怒りも悲しみをすべて受けると覚悟を口にする。
その時、朋さんの口の端が上に上がった。
『とは言え、謝っても許してもらえるとは限らない。許してもらえなかったらどうする? 怒る被害者を前に何も出来ず、頃合いを視てすごすごと帰るのか? すみませんでしたと肩を落とし、やっぱり我々は滅されるべきなんだ、なんて雁首揃えて落ち込むのか? で、最終的には俯いて【闇の道】に自ら捕らわれに逝く……大体、こんなルートか。アンタらの末路ってさ。あーあー、モッチーもジョージもにーちゃんも、必死になってアンタら救おうとしてるのにな。ご本人様にやる気がねぇ。報われねぇわ』
……!!
その言い方、あまりにも棘がある!
みんなをそこまで責める必要があるか?
止めなくちゃ、そう思って足を前に踏み出した……が、両肩を掴まれた。
先代と瀬山さんに止められたんだ。
2人は優しく顔を横に振る。
様子を視なさい、ここは我慢して、と言っている。
でも……!
『だんまりか? アタシの事ウルセェ女だと思ってるか? 何言われても最終的にどうしても消えたいんだ。はいはいはい、まぁぶっちゃけ、消えた方が楽だよな。こうして罪の意識にのたうち回ることもない。謝罪が終われば晴れ晴れと消えるってか。なぁ、アンタらの謝罪は被害者の為か? それともテメェらの為か? あぁ? 誰も答えねぇの? あーメンドクセ。んじゃあさ、今消えるか? 【闇の道】を待つこたぁねぇよ。アンタらはツイてる、おめでとう。ココにいる、アタシ自身が【闇の道】だ。とびきりキツイので送ってやるさ』
朋さんが【闇の道】……?
それってどういう____
カッ! と光が放たれた。
それは朋さんの右手から、印も無しに、予兆も無しに。
天に向けた手指から、真っ赤に光る稲妻が、数多これでもかと放出された。
鼓膜が震える轟音が鳴り響き、あ、と思った次の瞬間。
空は一面網の目状。
血色の蜘蛛の巣が張り巡らされていた。
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