第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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「嘘だろ……?」 視上げた空に零しはない。 360度どこを視ても、網目の稲妻がバチバチ火花を散らしていた。 唖然としながら視ていると、 『オイ、エイミーッ(・・・・・)!』 え……? 社長……? いや、違う、朋さんだ。 声は全然違うのに、巻き舌の言い方が、イントネーションが、社長の呼び方そのものだった。 朋さん、僕が社長になんて呼ばれてるか知ってたんだな。 『さっき、アタシの仕事は何なのかって聞いたよな? 教えてやるよ。アタシの仕事はレンジャー。各星のあらゆる悪霊を滅しに出向く、黄泉の国の特殊部隊だッ!』 朋さんの瞳が赤く光る。 刹那、天に広がる赤い網がゴウゴウと燃え出した。 雨上がりの蜘蛛の巣に数多の雫が溜まるが如く、赤黒の炎の雫が網の各所で燃え上がる。 負の雫は徐々に膨らみ震えだし、勢いを溜めているように視えた。 マ、マズイ……! アレ、みんなに向かって発射する気だ、 (おさ)の炎の比じゃないよ、 あんながヒットしたら、自動修復だって追いつかない、 「朋さんヤメテ!!」 大声を張った、 が、どうやら耳に入ってない、 口の端がグィィと上に引き上げられて、 その指先を曲げようとした、 ダメ……! アレ、きっとダメなヤツ……! 曲げさせちゃいけない……!! 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 腹の底から叫び声を上げた。 みんなは目を閉じジッとしてる。 何してんだ! 逃げてよ! クソーーーーーーーーーッ!!! 印なんて結んでない、だけど霊力(ちから)は手にあった。 なんで? 疑問は一瞬、そんなの今はどうでもいい、 僕は朋さんの右手に向かって霊力(ちから)を放つ、 最初の出会いの時のように、 赤い線が手のひらに突き刺さり、僕と朋さんは有線接続された、 イメージ、イメージ大事、 ____出来ないじゃない、やるんだよ!! このセリフがいろんなヒトで再生された、 ズブの霊的素人の藤田のお爺さん、 大好きな誠社長、 その奥さんのカワイイユリちゃん、 そして昨日の瀬山さん、 そうだ、 そうだよ、 「出来ないじゃない、やるんだよ!!!」 気合いを入れて腹にチカラを入れまくり、 僕は繋いだ線にありったけの霊力(ちから)を流した、 『あぁ!?』 朋さんが僕に向く、 僕は霊力(ちから)を流し続ける、 轟音がして、火花の弾ける音もして、 朋さんの手を通し、天に広がる蜘蛛の巣に僕の霊力(ちから)が行き渡るのを感じた、 このタイミングだ……! 「お母さん、お願い! 少し大人しくしてーー!!」 脳内に昨日のイメージを浮かべながら僕なりの言霊を唱えた。 『あぁ? おぁ? おわーーーーーーっ!!』 力強い悲鳴が響く、 ああ、ごめんなさい、 僕は女性になんて事を……でも仕方がなかったんだ、 許してください、 「はぁ……はぁ……はぁ……」 息を切らせて上を視た、 曇り空だ、 そこに赤い蜘蛛の巣はない、 目線を下げて下を視た、 そこには、網で出来た拘束具にグルグル巻きで転がってる、 朋さんの姿があった。
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