第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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『岡村さぁぁぁぁぁぁん!!』 ドーンとぶつかるように。 瀬山さんが僕にタックルをかました。 『すごいじゃない! 2回目の再構築成功だ! 偉いね、よく出来たね、さすがだね! 頑張った! 大好き!』 やだ……! ハイテンションな瀬山さん、まるで先代みたい……! めちゃくちゃベタ褒めだよ。 嬉しいけど、もっと褒められていたいけど、でもその前に朋さんに謝らなくちゃ。 どうしよう、みんなを滅してほしくないから咄嗟に拘束しちゃったけどさ、怒ってるだろうな。 その朋さんは地面の上でミノムシになっていた。 顔だけ出してコロコロしちゃって、『ほどけー!』なんて叫んでる。 ちゃんと謝ろう。 だ、大丈夫、許してくれるさ。 さっきも許してくれたじゃない。 「あの……朋さん?」 『許さねぇ!』 アウチ……! 謝る前から許さない言われちゃったよ。 僕は傍にしゃがみこんでゴメンナサイを言ってみた、だが。 『なんだこりゃあよ!』 「や、ごめんなさい。だって朋さん特殊部隊なんでしょう? 朋さん自体が【闇の道】なんでしょう? よ、よく分からないけどヤバイ感じがして……それでつい……えへ」 『”つい……”じゃねぇよ! 普通に止めろ! “えへ”じゃねぇし! 加減しろ! まったく素人はこれだから……ブツブツブツ』 「やぁ……も、ホント、ごめんなさい、止めたかっただけなの、だけど僕はまだ新人で加減とか分からなくて、」 『新人だぁ? 知るか、んなもん! つーかよ、本当に新人か? 新人が再構築すっか? 新人って言っとけば『えー! こんなコト出来るのすごくなーい?』ってチヤホヤされるから嘘言ってんじゃねぇのか? あぁ?』 「そ、そんなセコイ事しませんよ! 僕は本当に新人ですから! その証拠に霊視も口寄せも出来ないし!」 大威張りでそう言うと、後ろで視ていた中村さんが慌てて言った。 『だから岡村! 自分の弱点をベラベラ喋るなと言っただろうが!』 あ、そーだった。 ウッカリ言っちゃった。 「ごめんなさい、中村さん。ポロッと、ポローッと言っちゃったの。ね、ほら、僕の事心配でしょ? だから消えるとか言わないでよ」 『あぁ……もうな、はぁ……本当に心配だ』 「でっしょー!」 僕はニコニコ、ポニテは苦虫、誠ママンは呆れ顔。 ちなみに先代と瀬山さんは、2人して僕を褒めまくっていた(大福はまた寝てる)。 『よっこいしょっと』 内側で霊剣を構築したのか、朋さんは僕の拘束網をザクザク切って立ち上がる。 腕を回し肩を回し霊体(からだ)を捻りながらこう言った。 『あーあ、滅し損ねた。アンタらも滅され損ねたな。ダメだわ。次もエイミーに邪魔される、アタシがヤルのは不可能だ』 エ、エイミー?  聞き間違いじゃなかったと男達はざわつくが、とりあえずはお口にファスナー。 大人しく黙り込んでいる。 『アンタらが消えようとするの、どうしてもなら好きにしろってアタシは思うんだ。ただな、アンタらはもう悪霊じゃねぇだろ。百色華(ひゃくしょくか)は今も綺麗に咲いてるし、エイミーもモッチーもジョージも必死になってアンタら救おうとしてるんだ。少しは気持ちを汲んだらどうだ?』
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