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中村さんも翔君も杉野さんも、みんなは何も言えずにいた。
眉をハの字に困った顔だ。
朋さんはそんなみんなに静かに言った。
『被害者達に謝ってよ、禊が済んだら次の禊をやってみねぇか?』
腕を組む朋さんは、中村さんと同じくらいの上背だろうか、いや、中村さんの方が少し低いか。
『次の禊……どうやって……?』
いぶし銀が戸惑いながらそう聞いた。
『滅される覚悟があるんだろ? ついでに霊力も技術もあるんだろ? だったらさ、特殊部隊に入らねぇか? 地球だけじゃねぇ。生き人は他の星にもたくさんいるんだ。残念だが星の数だけ悪霊がいる。善良な生き人を脅かすんだ。アタシら特殊部隊は各星々の悪霊共を滅しに行く。けっこう骨だし危険も伴う。けどよ、それで助かる生き人が確実にいるんだよ。アンタらは過去の罪を悔いている。その気持ちを他に向けらんねぇかな? 自分らを滅する方向じゃなくてよ、善良な生き人達を助ける方向にだ』
朋さんの話、僕の胸は全力で踊りまくっていた。
みんなが特殊部隊……?
いいじゃない……!
だってみんなは日本で一番チカラを持ってる、あの”瀬山の霊能軍団”なんだ!
しかもだ、長に目を付けられたという事は、その中でもエース中のエース……!
お願い……”うん”って言って……未来を視て……消えたりしないで……!
『わ、我々が……と、特殊部隊……? よ、黄泉の国、所属の……?』
中村さんの声が震えてる、涙が溢れ出している。
『ああ、そうだ。だから言ったろ? 先に亡くなった被害者への謝罪、それは黄泉で直接しろって。そういう事だ。アタシはアンタらが特殊部隊に来る事を望んでいる』
『……わ、我々は……つ、罪人なのに……か?』
『元、罪人だ』
『た、たくさんの生き人に……害を……成した……のに……か?』
『だから謝りに行けと言った』
『謝って……許してもらえなかったら……?』
『大丈夫だ、ぜんぶアタシも一緒に行く。許してもらえるまで土下座するさ』
『な……なんでお嬢さんが……? アナタはなんにも悪くないのに』
本当にそうだ。
朋さんは無関係、なのに謝るのか? 土下座をするのか? どうして?
僕を含め、その場の全員に注目される朋さんは、目を細め、片眉を上げ、挑発的な顔をした。
この表情、社長にそっくりだ。
あの人もよくこんな顔をする。
『ああ、言い忘れてた。アタシさ、昇級したんだ。来月付けで一般兵じゃなくなる。アタシが隊長で隊員を率いるんだ。でだ、アンタら全員アタシの部下なれ。特殊部隊に引っ張るだけ引っ張って後は放置、なんてしねぇよ。頭からケツまでアタシが面倒見る。あぁ? 同情じゃねぇよ、だって条件にピッタリだ。アタシはさ、飛び切り強くて群を抜いた技術があって、霊の痛みが分かるヤツを探してた。これが中々いなくてな。視付けたら絶対とっ捕まえて離さねぇと思ってたんだ』
ふー、
ここまで話した朋さんは短く息を吐いた。
首をコキコキ鳴らしながら、肩の力をダラリと抜いて、そしてフッと顔を緩めると……
『んー、なんも難しいこたぁねぇよ。部下の不始末は上司の不始末。
子供が悪い事してそれを謝りに行くって言ってんだ。親がついてったってなんの不思議もねぇだろ。ただそんだけ。分かったか? これがアンタらと謝罪に回る理由だ』
朋さんはそう言うとニカッと笑った。
まるで肝っ玉母ちゃんみたいな表情で。
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