第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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◆ 『お、お、お、岡村ぁ……! お、俺の事、絶対に忘れるなよな、絶対、絶対だぞぉ……えっ……えっぐ……えぐえぐ……』 苦内(くない)を持てば手練れだけれど、素顔は泣き虫17才。 (かける)君は僕に抱き着き号泣していた。 僕もすっごく淋しくて一緒になってえぐえぐで、涙が溢れて止まらなかった。 「か、(かける)君、えぐ……えっぐ……えぐえぐ……忘れるはずないだろう、だってキミは弟みたいなものだもの……いいかい? 朋さんの言う事良く聞いて頑張るんだよ。もう消えようなんて思っちゃダメだからね……!』 『おーかーむーらぁぁぁ…………ぁぁぁぁぁあああああん! もう会えないのかと思うと淋しいよおぉぉぉぉぉ!』 ひしっ!! 十代と三十代、僕らは泣きながら抱き合っていたのだが…… 『大袈裟だなぁ……もう、』 朋さんが呆れた顔でため息をついた。 『ボスは分かってない! 俺は岡村が大好きなんだ! 次に会えるのは岡村が死んだ時……またすぐ会いたいけど長生きもしてもらいたい……えぐえぐ……岡村は口寄せ出来ないし、だから呼んでもらえない。霊視も出来ないし、希少の子なのに彼女もいないし片想いだし……もうダメだぁ……うわぁん』 ちょ、彼女がいないとか片想いとか希少の子とか、それぜーんぶ関係ないよね、んもー、涙が引っ込んじゃったじゃないのさ。 余計なコトまで言いながら泣きじゃくる(かける)君。 中村さんは『(これ)はまだ子供なもので』と大汗を掻いていた。 朋さんは怒るどころか寛容で、 『ランナー、そんなに泣くな。大丈夫だ、エイミーが死ななくてもまたすぐ会えるから』 ラ、ランナー!? それ、(かける)君のコト? まさかとは思うけど、名前が”カケル”だから走るにちなんでランナーなの? 違うからね? 漢字、違うからね? 【駆る】じゃないからね? んで、なんでまた会えるの?  それはすこぶる朗報だけど、僕、口寄せもガチで出来ないけど大丈夫かな。 『特殊部隊の必須スキルに惑星単位の瞬間移動がある。コレを覚えないと仕事にならねぇからな。最初に習得してもらう予定だが、覚えれば好きな時に好きな星に行ける。だから泣くな、エイミーに会いたいならとっとと覚えろ』 ぱぁぁぁぁ! 泣いた(かける)がもう笑う。 17才は『3日で覚える!』と俄然やる気を視せていた。 そこからしばし、僕は男達に囲まれた。 みんな良い顔で笑ってる。 目の奥の暗い影が取り払われて、生き生きとしてるんだ。 これが本当に本当のみんなの姿なんだろうな。 ヤバ……これだけで泣きそうだ。 でもいいや、(ここ)に来てから僕は何度も泣いている。 もう今更だ。
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