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◆
出発準備が整った。
みんなは朋さんを中心に扇の形に並んでる。
いよいよだ。
『ジョージは帰らなくていいのか?』
朋さんが聞く、帰るなら一緒に連れてくがという意味らしい。
『うん、大丈夫。帰りは平ちゃんが戻してくれるから。もう少しだけ現世にいるよ。佐知子に”ごめんね”って、”おみやげ持って帰るからね”って伝えてくれる?』
瀬山さんは優しく笑ってそう答えた。
佐知子さんって奥様だ。
瀬山さん、まだ現世にいてくれるみたいだし、後でどんな女性か聞いてみよっと(照れて答えてくれないかな?)。
『オッケー伝える。モッチー、大福、エイミー。コイツらの入国手続きが終わったら、謝罪行脚でまた現世に戻ってくる。時間があったら会おうぜ』
ぱぁぁぁぁ!
そか!
みんな一旦戻ってくるのか!
とはいえ試算で2年かかる謝罪を1年でまわると言ってたからな。
そうそう会ったりは出来ないかも。
でもいいの、消えないでいてくれるなら、元気でいてくれるなら。
『よーし、お前ら!! そろそろ逝くぞっ!!』
ウゥッス!!!
野太い声が重なってみんなの顔が引き締まる。
ん……でも少し緊張してるみたいだな。
『アタシの傍を離れるなよ。離れたら宇宙のど真ん中に放り出されるからな、ん? ……ランナー、お前なにしてんだ? 離れるなとは言ったが手は繋がなくても大丈夫、……ま、繋いでても良いけどよ』
あらら、苦内を持てば手練れなのにねぇ。
宇宙のど真ん中で……の下りで怖くなったらしい。
で、そろそろ逝くのかと思ったら、
『あ、そだ。出発前にやっとくか』
まるでイタズラ娘の顔だった。
社長みたいにニヤリと笑った朋さんは、印も無しに霊力を発動。
それはどこからともなく現れた。
砕いたルビーに良く似たモノ。
赤くキラキラ、細かに光る小さな欠片がふわりふわりと宙を舞い、やがて男達の胸に集まる。
皆で揃いの”瀬山の制服”、白いシャツにグレイのパンツ。
シャツの胸には六芒星の刺繍があって、欠片は星に付着した。
なんだろう?
そう思って眺めていると、欠片は溶けてシャツに馴染む。
やがて欠片はその形を整え始め、10を数えるより早く星の刺繍をリンゴの刺繍に上描きした。
『これは……』
男達は顔を下げ、それぞれ刺繍を視つめている。
朋さんはガハハと笑い、
『どうだ気に入ったか? ウチの部隊のマークだ! 黄泉の国に逝ったら隊服があるけど、これもカッコ良いだろ?』
そう言ったんだ。
この瞬間、みんなを縛り続けたもう一つのモノ。
”瀬山の家”から解放されたのだと、僕はそう確信した。
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